捨てられる素材をデザインで再生 ― モデコ(サリーレーベル) 水野浩行社長

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「インタビュー」

捨てられる素材をデザインで再生 ― モデコ(サリーレーベル) 水野浩行社長

2017年06月02日

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Interview

サブカル的に一瞬で終わらぬよう
売るマーケットを変えていく 

環境保全や社会貢献に配慮する「エシカル」な物づくりが、日本でもこの数年盛んに言われるようになった。捨てられていた素材を使って、デザインの力で新たな命を吹き込む――そんな作り手がたくさん出てきたが、いつの間にか姿を消してしまうケースも少なくない。そんな中、「アップサイクル」を掲げて活躍を続けているのがモデコを展開するサリーレーベル(愛知県名古屋市)だ。

消防服を素材にバッグを製作消防服を素材にバッグを製作。自治体ごとに消防服の色が異なるため違うイメージに

――捨てられていた消防服をバッグに仕立てたものがアイコニックな商品としてよく紹介されています。

今、名古屋市など6都市の自治体から依頼されて消防服をバッグにしています。定量的に毎年廃棄が出るので、今期も2トンを製品化しました。

――2トンの全てを製品化するんですか。

はい、需要に対して素材が足りない状態なので、他の自治体からも欲しいくらいです。この他にも、シートベルトやフローリングを使った鞄などもつくっています。

――アップサイクル製品に使う素材は、どうやって決めているんですか。

デザイナーがつくりたいものがあってその素材を探すのではなく、自治体や企業からオファーが来たものを、咀嚼していきます。これが難しい所で、作り手がいいと思うものをつくる「プロダクトアウト」でもなく、顧客のニーズに応じてつくる「マーケットイン」でもない。向こうからきた素材をどうソリューションするか考えて、どのマーケットにあてていくかという事まで戦略を練らないといけません。

フローリングのフロア材をつかってバッグに仕立てたフローリングのフロア材をつかってバッグに仕立てた

盛り上がって終わりじゃダメ

――そういう難しさもあってか、アップサイクルのブランドって、最近はあまり聞かなくなった気がします。

エシカル系のメーカーは、社会問題を解決する可能性として、アップサイクルの製品をつくって提案した所でひとつのゴールを迎えるんです。いいものをつくっても、売るところまでのノウハウがあまりない。アップサイクルのブランドは10個くらい目立つ所があったと思いますが、今は片手ないと思う。

――そんな中、なぜモデコは成功しているんでしょうか。

成功というとちょっとあれですが、しぶとくやれている理由とすると、しつこいからです(笑)。目の前の問題に突き動かされて、盛り上がって終わりじゃダメで、ブランドとして事業として続けていくには中長期な視点を持たないといけない。じゃないと、ファストファッション全盛の時代に、サブカル的に一瞬で消費されて終わってしまう。

海外展開に注力、まずはアジアへ

――一時の流行で終わらないために、モデコはどんなことを?

ひとつは、マーケットを変えていくことです。アップサイクルで世界的に一番成功しているのは、スイスのフライターグ。ここを成功事例にとると、トラックの幌を素材にそれ一本で93年からやっているんですが、10年間ヨーロッパで売って、その後日本で10年やって、今はアジア圏に行っている。

やっぱり人間って、刺激無しでは生きていけないので、どんなにいいと思っても他のモノが欲しくなる。フライターグはそれを分かっていて、売るマーケットを変えている。モデコも百貨店を大きな販路につかっていましたが、それを取りやめて、海外での展開に力を入れていく予定です。まずは香港からはじめてアジアへ。国内は直営店とセレクトショップの卸、オンラインショップでの展開に切り替えます。

――2015年には、芸能事務所のアミューズと提携しましたね。

モデコの体制をガラリと変えていて、モデコはデザインと企画、商標の管理を行って、プロモーションはアミューズ、直営店の運営も生産も、それぞれパートナー企業が担ってくれています。ブランドの指針やイデオロギーはデザイナーとして決めていきますが、マネジメントやプロモーションは、信頼できるパートナーに委託することで、成長を目指します。

サリーレーベル 水野浩行社長MODECO
水野浩行社長
Mizuno Hiroyuki

PROFILE
1985年生まれ。名古屋出身。バンドマンとしてギター・ボーカルを行った後、家業の美容商社で2年間仕事をする。その後、モデコを立ち上げた。2014年には芸能事務所のアミューズと提携。趣味は仕事と旅。

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416号(2017/05/25発行)9面

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