【50行ストーリー】本を読まない常連客、恋人は本好きばかり

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「リサイクル店で起きるお話 50行ストーリー」

【50行ストーリー】本を読まない常連客、恋人は本好きばかり

2016年01月25日

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リサイクル店で起きるお話 50行ストーリー古本酒場 コクテイル

古本酒場コクテイル(東京都杉並区)は古本に囲まれたレトロな空間で酒や「文士料理」が楽しめる店だ。「文士料理」とは作家が好んで食べたり、作ったり、作品の中で描いた料理のことである。BGMにジャズが静かに流れる店には、自然と本好きが集まってくる。

本に囲まれたレトロな店内本に囲まれたレトロな店内

そんな同店の常連客に、珍しく「本を読まない」30代の男性がいる。その男性は容姿端麗で、女性にもてる。付き合う女性は知的で本好きが多く、必ず店に連れてくるのだが、何故かいつも逃げられてしまうらしい。

「少年時代に大切な人に裏切られた経験があるそうで、人と深く関わることを無意識に避けてしまうのではないでしょうか」(狩野俊代表)

そんな男性がこれまで一度だけ、「読んでみたい」と言った本がある。浅田次郎の『壬生義士伝』だ。主人公・吉村貫一郎は家族を守るために脱藩して新選組隊士となり、愛と義を貫いて生きる。その生き方に惹かれるものがあったのだろうか。

「人というのは状況次第で人を裏切るものなのです。そのことに納得出来たら、彼も変われると思うのですが」(狩野代表)。

その日がいつ訪れるかわからないが、今も男性は毎晩同店に通っている。

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384号(2016/01/25発行)15面

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