シェアエコで経済構造が大きく転換 ― シェアリングエコノミー協会 重松大輔 代表理事

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「インタビュー」

シェアエコで経済構造が大きく転換 ― シェアリングエコノミー協会 重松大輔 代表理事

2016年11月09日

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既存の事業者を喰ってしまうウーバライゼーション

所有ではなく共有する――『シェアリングエコノミー』が、世界の産業や経済を革命的に変えつつある。リユース事業者もこの変化と向き合わなければ、取り残されてしまうかもしれない。自身も空間を共有する「スペースマーケット」を創業し、シェアリングエコノミー協会の代表も務める重松大輔氏に、シェアエコの本質や日本での広がりについて尋ねた。

シェアリングエコノミー協会 重松大輔代表理事シェアリングエコノミー協会 重松大輔 代表理事

――シェアリングエコノミーという言葉が日本でも広がってきましたが、具体的にどんなサービスのことを指しているか改めて教えてください。

メルカリのような「モノのシェア」、エアビーアンドビーやスペースマーケットのような「空間のシェア」、クラウドワークスやランサーズのような「スキルのシェア」。ウーバーのような「ライドシェア」。そして、クラウドファンディングのような「お金のシェア」があります。いずれも遊休資産の活用ですが、幅広く色んなプレイヤーが活躍しています。

シェアエコは産業を再定義する

――インターネットを通じて、これまで眠っていた物品やスキル、空間などあらゆるモノが活用されはじめているんですね。シェアエコは今後、経済や消費にどんな影響を与えるでしょうか。

既存の経済は、法人がきっちりとしたサービスを個人に届けるものでした。それが、個人でも誰でも商売人になれるようになる。例えば私も、自分のスキルを空いた時間に北海道の経営者に共有したり、会社の空いている会議室を貸し出したり、不要なものをメルカリで売ったりすることができます。

簡単に商売ができるようになるので、家庭の奥さんなどが空き時間をつかって稼ぐようになったり、マイクロアントレプレナーみたいな人がたくさん出てくるでしょう。B2Cは数に限りがありますが、CとCの組み合わせはN次的に増えていくことになる。

――これまでの経済のあり方が揺さぶられる波を感じます。

今、経済構造の大きな転換期に差し掛かっています。ウーバライゼーション、ウーバー症候群という言葉もできていますよ。

――車を持つ個人が登録して、スマホ経由で配車依頼した人を乗せるライドシェアを提供するのがウーバーですよね。その症候群とはどういう意味ですか。

ビジネスモデルが異なる競合相手が市場に参入して、その業界の状況が大きく変わることを指すウーバーのなしたことを起源とする造語です。

ウーバーは、タクシーを1台も持ってなくてプラットフォームを運営しているだけです。でも、世界一タクシーを走らせている会社になってサンフランシスコではイエローキャブがつぶれました。

全く関係ない事業者が既存の事業者を喰ってしまうことがもう起こっています。会社と個人のあり方もこれから変わっていくでしょう。

――モノの人生を複数人で共有するリユースもシェアエコだと考え、良い波なんじゃないかとも思っていましたが、シェアエコを理解せずにいると、リユース業界もウーバー症候群に侵されてしまうかもしれませんね。

シェアリングエコノミーは既存の産業を再定義するものになります。理解した上で取り込んでいった方がいいと思います。

SNSで存在の裏付けできるように

――なぜ、今のタイミングでシェアエコが広がってきたんでしょうか。

大きな理由が2つあります。ひとつは、プラットフォームがスマホになったことです。ジョブズがアイフォーンを広げたおかげで、同じプラットフォームで同じサービスを世界中に一気に出せるようになりました。

もうひとつは、ソーシャルネットワーキングサービスの浸透です。フェイスブックなどSNSがパスポートや免許証に代わって個人を特定する機能になってきた。C2Cのやり取りって、本質的にその個人に対する信用が担保されないと恐くて利用できないじゃないですか。今はSNSで存在の裏付けがある中で、取引が行える。

――SNSにはその人のパーソナリティーも表れるので、身分証よりもある意味において信頼をはかる最適なツールと言えるかもしれませんね。

あとは、消費者サイドのエデュケーションじゃないですけど、安い分使用者も気を付けてつかう。そういう商品だと思います。良いレビューがついて信頼がどんどんたまっているなら、「この人は社会的規範を守っているんだな」と判断できる。逆に「このおやじは悪い奴だ!」とか書いてあったら、取引きはやめておこうと考えられる。

その上で、既存には無い感動体験ができるものだと思います。安い価格でいいものが使えて、その提供者がすごくいい人だったら嬉しくないですか。エアビーアンドビーで誰かの部屋に宿泊して、そのオーナーから「冷蔵庫の中のビール全部飲んでいいですよ」とか言われたら私なら感動する(笑)。

協会概要
名称:一般社団法人シェアリングエコノミー協会
所在地:東京都品川区西五反田1-21-8(株式会社ガイアックス内)
理事:代表理事 上田祐司(株式会社ガイアックス) 代表理事 重松大輔(株式会社スペースマーケット) 理事 甲田恵子(株式会社AsMama) 理事 角田千佳(株式会社エニタイムズ) 理事南章行(株式会社ココナラ) 理事 吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス)理事 中山亮太郎(株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング)
代表プロフィール
1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。2000年NTT東日本入社。主に法人営業企画、プロモーション(PR誌編集長)等を担当。2006年、当時10数名の株式会社フォトクリエイトに参画。一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。ゼロから立ち上げたウェディング事業は現在、全国で年間約3万組の結婚披露宴で導入されるサービスまでに育つ。2013年7月東証マザーズ上場を経験。2014年1月、株式会社スペースマーケットを創業。2016年1月にシェアリングエコノミー協会を立ち上げ代表理事に就任した。

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402号(2016/10/25発行)7面

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