《トップINTER VIEW》トランク 松崎早人 社長、宅配収納サービスで9億円調達

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《トップINTER VIEW》トランク 松崎早人 社長、宅配収納サービスで9億円調達

2018年08月21日

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・トランクは段ボールに入れた物が預けられるシェアエコサービス
・長谷工やドコモなど多くの企業と提携している
・落とし物管理などにも乗り出す予定


宅配収納サービスで9億円調達

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トランク 松崎 早人 社長

社長プロフィール
1968年8月10日生まれ(現在50歳)。福岡県出身。慶応大学経済学部卒。同大学在学中にスカウトを受けモデル活動を始める。25歳のときにトップモデルを目指し単身渡欧。PARIS,MILAN,NYとコレクションモデルとして世界を周る。30歳のときに帰国し、広告PR事業で起業。斬新な広告手法を評価される。その後2014年に株式会社トランクを設立し、同社代表取締役に就任。「必要なモノが必要なときに手元に届く」シェアリングプラットフォーム構築に挑戦

段ボール1箱から預けられる宅配収納サービス「trunk(トランク)」を運営するのがトランク(東京都新宿区)だ。昨年2月にサービスを立ち上げたばかりのスタートアップ企業ながら、NTTドコモ、長谷工グループ等の大手企業と相次いで業務提携を結んでいる。同社が起こそうとするイノベーションとは何か、松崎早人社長に聞いた。

モノの流動で、人の行動が知れる

倉庫持たない収納会社
モノの位置情報を管理


――トランクとはどんなサービスですか。

松崎  利用者は預けたい荷物を段ボールに入れ、アプリ上で集荷依頼を出す。すると配達業者が取りに来てくれ、倉庫に預けることができます。料金は月額1箱500円。預けた荷物は1つずつ撮影され、利用者はアプリ上で管理できる。いつでも手元に取り出したり、不要ならば売ったり、譲ったりすることもできます。

――資金調達の累計は約9億円になり、7月2日には長谷工との提携も発表されました。既にさまざまな企業と提携されていますね。

松崎  ドコモさんが提供する「dリビング」のコンテンツの中にトランクを入れてもらっています。dリビングの契約者であれば1箱目の利用料が無料。長谷工グループさんとは、同社が管理するマンションの入居者に向けて、こちらも同じく1箱目を利用料無料で提供しています。

――トランクルームなど既存のサービスや類似の宅配収納サービスがあると思いますが、違いは何でしょう。

松崎  私たちは倉庫も車両も持っておらず、倉庫会社さんの空きスペースを活用させてもらって保管をしています。私たちは、モノの位置情報を1点ずつ管理するというシステムを運営している会社になります。モノを保管できるのであれば、倉庫じゃなくてもいいんです。保管という部分では他社と被りますが、それ以外では全く違うサービスだと思っています。例えば、倉庫会社がやっている類似サービスであれば、他社の倉庫を使う必要がありません。自社倉庫の空きスペースを有効活用するために預かっているはずですからね。また、売ったり取り出したりするよりは、黙って保管している方が保管料を稼げるのでいいわけです。

――御社も保管料で収益を上げていますよね。

松崎  今はそういった面もありますが、トランクがやろうとしているのは、モノが動くデータを集めることなんです。ですから、どんどん流動化してもらった方がデータを集められるので望ましいわけです。

――そのデータを活用すれば、モノを売るタイミングの予測などもできそうですね。

松崎  我々はモノが動く瞬間のデータを持つことになるので、その人のアクションを知ることができます。例えば今日トランクから浮き輪やゴーグルを取り出したり、買ったりした人は、近々海に行く可能性が高いわけです。単純にモノを預かったり、売ったりする以外のシーンでも、役立っていくと思います。

モノと人をつなぐ
サービス作りたかった


――そもそも、なぜこのサービスを立ち上げようと思ったのですか。

松崎  東日本大震災で被災地ボランティアに行き、そこで見たのは〝物がない〟世界でした。また、そのボランティアをしている間、福岡の実家では父が亡くなりました。帰省すると父の遺品が残っていて、心の踏ん切りや物理的な量のこともあり、捨て方に困ったんです。物がないという被災地がある一方で、こちらは物の捨て方に困っている実家。父の死に目には会えなかったんですが、「お前がやるのはこれだ」と父から言われたように感じ、モノと人をつなぐサービスを作ろうと思いました。

――既存のトランクルームや貸倉庫がありますが、それでもやろうと思った理由は。

松崎  僕、世の中にトランクルームがあるって知らなかったんです。実は亡くなった父の物をすぐに捨てられなかったときに初めてトランクルームというサービスを知り、そこに父の物を預けたんです。ただ、トランクルームまで運ぶときに困ったことがありました。普通、車に物を積んで運びますよね。でも、僕がいなくなれば母は車に乗れませんから、誰かが取りに来てくれないといけない。また、持ち出すときだって誰かがいないと成立しない。それに預けた物が何だかわからなくなってしまう。そこで、預けた物をデータベース化し、お願いをすれば取りに来てもらったり、運んでもらったり、元に戻してもらえたりできるということが必要だなと感じました。

所有権は動いても
モノは動かない世界

――西日本鉄道との提携もそろそろ動き出すそうですね。

松崎  8月ぐらいからテストケースで始まる予定です。西日本鉄道さんが運営する電車、バス、タクシーなどでの落とし物を、トランクに全て載せていただき私たちが管理していきます。

――えっ、落とし物ですか。すごいボリュームになりそうですね。

松崎  はい。日本の法律では、落とし物を拾ってから3カ月間は、落とし主の物なのできちんと保管しておかないといけない。圧倒的に多いのは傘で、片方だけの手袋なども結構あるようですが、そんな物でもすぐには捨てられず、相当なコストを使って管理しているようでした。そこを私たちがしっかり管理することで、西鉄さんのコストはほぼゼロになる予定です。

――保管後は捨てなきゃいけない物が多そうですね。

松崎  実際にはそうかもしれませんが、やっぱり落とし物ってさっきまで人が使っていた物、ないしは鞄の中に入っていた物なので、綺麗な物が多いんですよ。なので、売れる需要があると思っています。まあ、売れなくてもあげればいいし、絶対に売れないといけないとは思っていないんです。誰かの手元に動く時には、データが取れますし、送料が発生します。そこは商いのポイントになるのかなと思っています。

――出資を受けたオークファンとも協業されると聞いています。どんなことを考えていますか。

松崎  私たちが多くのモノを持った時に、オークファンの会員がどっとトランクに入ってきたら面白いことになると思います。会員の方はモノを売り買いされる方ですよね。例えば、問屋さんが入ってきたとすると、そういう人は持っている商品数がやたらと多い。するとトランクの中で「これ買いませんか?どうですか?」と、言いまくるわけです。業者同士の取引ですから、所有権が動くだけなので、仕入れの際の送料がかからない。さらにオークファン会員の方がここで仕入れたモノを楽天ヤフオク!等に出品し、それが売れた時に初めてモノがトランクから出ていくことになるんです。

――モノの所有権だけが動くというのは面白いですね。

松崎  今はまだお話できないのですが、近々社運を賭けたサービスも始めようと考えていますので、楽しみにしていてください。

【会社データ】
社   名  株式会社トランク
所 在 地  東京都新宿区新宿1-29-13平井ビル4F
設   立  2014年10月23日
資 本 金  8億5003万4000円(資本準備金含む)
決 算 期  9月末
主 要 事 業  情報サービス業 広告代理事業 デザイン業務 代表取締役 松㟢 早人

第445号(2018/08/10発行)9面

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