《皮革製品修復ラボ(20)》カビの除去と成長阻害で「匂い」とる

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《皮革製品修復ラボ(20)》カビの除去と成長阻害で「匂い」とる

2014年07月16日

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皮革製品 修復ラボLesson.20 バッグの健康診断

世界一潔癖な日本人女性に向け

バッグの健康診断も大詰めだ。売るための最後の、かつ重要な問題・・・それは匂(臭)いである。

美靴工房には相変わらず「製品の臭いをとってほしい」というオーダーがよくある。

ブランドリサイクル店においても、バッグを購入する際に匂いを確認するお客さんは少なくないようだ。

大半が押し入れなどに仕舞い込んだために発生するカビ臭さなどだが、思いのほか多いのが化粧品などによる他人の使用履歴を感じさせる匂い全般だ。

さて、例のごとくお客さんと一緒にバッグの健康診断をやっていこう。処方箋もいつものように紹介する。

□カビの臭いは気になりませんか?

バッグの口をあけて中の匂いを嗅いでみよう。カビが目に見えなくても、すっぱい匂いやほこり臭さがあればカビが生えている証拠だ。

処方箋
水やクリーナーをつかって表面のカビを除去して、防かび剤を塗布しよう。例えば当社の防かび剤の場合なら、革の表面に防かび剤の被膜をつくる。カビの胞子が飛んできたとしてもカビ菌の細胞壁を壊し、成長を阻害する。この製品は消臭も兼ねているが、市販品で消臭を兼ねていないものを使う場合は、消臭剤も活用する。ただし、香料を匂いに覆いかぶせごまかすマスキングタイプのものは、一時的で効果が薄いので避けよう。

□化粧品の匂いは気になりますか?

いい匂いでも、気になる人は気になる。日本人は基本的に無臭がベスト!

処方箋
実は特効薬が無いのがこのタイプの匂い。ただし、発生源がなく付いているだけなので自然といつかは取れていくと説明しよう。できるだけ早く取りたいお客さんには、自宅でできる処方箋を教えてあげるといい。まずは台所用洗剤を含ませた布を固く絞り、少しずつ拭いていく。消臭剤も塗布して、風通しのいい場所にカバンの口を開けて置いておくといい。
プラス1
革製品を風にさらす場合は直射日光の当たらない場所に置くこと。色焼けや退色の原因になってしまうので要注意だ。ただし、ヴィトンのモノグラムの場合なら太陽光に当てた方がいい。臭いがよく消える。同製品は革ではなく塩化ビニールでコーティングされているので、直射日光に当ててもOK。

中古品でも、できるだけ「きれいな状態」で買いたいものだ。潔癖な日本人女性にとっては、臭いがあるかどうかは、買うかどうか決める大きな要素となっている。

当社の顧客曰く、良い匂いも悪い匂いもいらない。単純に製品そのものの香り以外は不要だそうだ。

世界一潔癖な国である日本の、とりわけ女性をターゲットにリユース業界がここまで大きなマーケットを築いてきたのは、大きな賞賛に値することだ。匂い問題を解決すれば、さらにポテンシャルが広がると思う。

さて、次回は靴について触れたいと思う。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

347号(2014/07/10発行)8面

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