【TOP INTERVIEW】トレジャー・ファクトリー 野坂英吾社長 

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【TOP INTERVIEW】トレジャー・ファクトリー 野坂英吾社長 

2020年06月19日

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コロナ提言INTER VIEW
トレジャー・ファクトリー 野坂 英吾社長

新型コロナウイルスで来店型ビジネスが苦渋を味わう中、リユース業態もその例外ではなかった。緊急事態宣言が解除されたが、かつての人出や消費行動がすぐに回復するとは想像し難い。リユース企業はどんな策を取るべきか。そこで、リユース店大手トレジャー・ファクトリー(東京都千代田区)の野坂英吾社長に、コロナ渦の様子と業界の今後について話してもらった。

トレジャー・ファクトリー 野坂 英吾社長トレジャー・ファクトリー 野坂 英吾社長

 

営業継続に感謝の声 換金のニーズ伸びた

――前例にないレベルでのウイルスまん延が起こりました。御社への影響は。

野坂 4月の全店売上は前年比66.7%、既存店売上は同64.6%です。現在は大部分で営業していますが、4月8日からは原則全店で営業を3時間短縮、東京・神奈川の店舗で4月上旬の土日を休業、また一部業態の全店舗、商業施設内の一部店舗は4月上旬から休業しました。営業を凝縮せざるを得ない中で、ご来店いただけた方の数が減っていったことが数字に現れました。

――巣ごもり特需によるプラスの面もあったことでしょう。

野坂 大きく分けて3つの特需が起きました。まずは在宅勤務に関連し、ワークデスク、チェア、ノートパソコン、モニターといったもの。次に感染拡大防止のために必要になったものとして、マスクを作るためのミシンや、空気清浄機など。また3つ目は、外出を控えたことによってボードゲームなどの遊び道具や、健康に留意するためのフィットネスアイテムなどの売れ行きがよかったです。

――営業を継続する中、お客からはほかにどんな反響が。

野坂 営業していることで感謝の声が届いていました。販売は落ちていきましたが、自宅から出られなくなったことで部屋の整理が進み、買取のニーズは伸びていった。中には生活が厳しいために換金したいという方がいらっしゃったり、カウンター越しにありがとうって泣きながら感謝する方もいらっしゃったりしました。あと販売面では、新生活の上で必要になる家電などについて、今は先が見えないからそこまでの出費はできないからと、リユース品をお買い求めされる方がいました。

――営業継続か休業か、判断に悩まれた経営者もいたかと思います。

野坂 今回の件でいつも以上に強く感じたのが、リユースビジネスは社会的な意義が大きく、世の中に必要とされているということです。法律の立て付け上、質屋は自粛の対象外でしたが、一部の古物商は自粛対象となり得てしまったようで、行政の方にはまだまだ十分ご理解頂けていないのだなと痛感しました。今後同じようなことが起こったときに声を大にして言いたいのは、質屋と同じくリユース店も、差し迫ってお金を必要としている人にお金を提供できる業態であるということです。日本リユース業協会としても強くそこは伝えていきたいなと思っています。

ビジネスモデル見直し低単価品もネット併売

――今後人出も少しずつ回復していくかと思いますが、リユース業界にはどんな影響があるでしょう。

野坂 消費動向については、コロナの影響により収入が減り、今後の生計不安から節約志向が高まると思います。リユース店については各社、緊急事態宣言解除後に客足が徐々に戻りつつあるようなので、業界全体に大きな影響を与えるレベルの変化はないのではと予想します。しかし、インバウンド消費の回復には時間を要することから、この売上比率が高い店舗は国内需要に対応した店舗へのモデルチェンジが必要になる。また、非接触で海外への販売に繋げられる越境ECの拡大・利用強化を行っていく企業が増えるでしょう。また、国内需要に関しては、しばらくは遠方移動を極力控えることが予想されるため、立地によっては客足が少なくなる店舗も出てくる。遠方からの来店が多かった都心型店舗などでは売買方法を見直し、EC比率を高めるなどの変化をさせながらの営業が必要になってくると思います。

――やはり、EC化は進みそうですね。

野坂 それでも、オンラインとリアルの組み合わせをどう構築していくかは重要だと思います。コロナの渦中でも店頭買取を制限しなければならないほどに、需要があったわけです。非対面・非接触も大事ですけれど、必ずしもお客様がそれだけを求めているかというとその限りではないと思っています。オンライン飲みが流行し、一人で居るよりかは誰かと話し合いたい・伝え合いたいとなったように、人と人の繋がりの重要性はこれを機に増しています。オンラインから申し込みを受け付ける出張買取に関しても、接客の仕方など変えていく必要性もあるだろうし、一方でいつもリアル店に商品を持ち込まれる方に関しては宅配買取だって勧める。販売も同じく、いつも店頭で購入される方にEC上での販売を押し出していくことだって必要になります。

――御社でも既にEC販売の方で動きを見せていますね。

野坂 公式アプリの改良をしているところでして、ECの売上自体はかなり上がっています。これまでは店舗でしか売らなかったような安い価格帯の商品もEC併売し、出品数を増やしアイテムの幅を広げています。既に低単価の洋服は動き始めているんですよ。6月以降、もっとこうした消費行動の変化が起きていく。今後需要が伸びてくると思われる在宅勤務アイテムや、自宅で活用するアイテム、コロナの影響を受けづらい外出先で使用するようなアイテムなどは伸びるでしょうから、新たな需要に対応したリユース事業等が増えていくのではないでしょうか。

リアル店の在り方不変 「身近な店は即金性高い」

――改めて、コロナが経営計画に影響を与えた面は。

野坂 情勢が落ち着くまでは、当期に計画している新規出店を一時抑制することとしました。収束した後に出店を再開していく予定です。ですがリアル店舗の在り方については、現時点では考え方に大きな変化はありません。身近に店舗があることで地域住民にサービスを知ってもらえる点や、実店舗があることで即金性がある点、また、リユース店舗業態の場合は、他業界とは異なり店舗が仕入れ拠点の機能もある点がメリットに挙げられますので。

――前期決算発表の際に「収束後、(マーケットは)一気に伸びます」と力を込めてお話されていましたね。

野坂 今回を機に初めてリユース体験をする人が増えてきていると、実感しています。業界全体をあげて、健全化されたやりとりを推進することでもっと世の中からの信頼を掴めるはずです。今また力を合わせて、裾野を広げていきましょう。

 


会社概要
会 社 名 トレジャー・ファクトリー
本社所在地 東京都千代田区神田練塀町3 大東ビル2F
会 社 設 立 1995年5月25日
資 本 金 521百万円
売 上 高 19,123百万円(2020年2月期)
代表取締役社長 野坂英吾
事 業 内 容 リユースショップの運営、リユース品のインターネット販売・買取、ファッションレンタルCariruの運営、トレファク引越の運営

第489号(2020/6/10発行)9面

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