ネット通販｢駿河屋｣の実店出店攻勢―エーツー(駿河屋)　杉山綱重社長

中古メディア・ホビー通販の駿河屋を運営するエーツー(静岡県静岡市)が、駿河屋の屋号を冠した実店舗の出店攻勢をかける。4月に出店した秋葉原店は2時間待ちの行列ができた。同社は業績を伸ばしており、今期の売上高は約180億円の見込みだ。縮小するメディア市場において、伸び続ける理由とは？杉山社長に尋ねた。

エーツー(駿河屋)　杉山綱重社長

縮小するメディア市場で業績伸ばす、2016年8月期売上180億円見込

――秋葉原に｢駿河屋｣を2店同時オープンしましたね。

杉山　初動がすごかったですよ。たくさん人が集まったので入場制限をして、2時間待ちの行列ができました。店のキャパが足りないと気づいたので、3号店の物件を急いで探しているところです。

――立て続けに駿河屋の実店舗をつくっていますね。

杉山　大阪や静岡本店を入れて6店になりました。これから池袋、中野、原宿、仙台、天神と主要都市に出店していきます。

――原宿にも出すんですか。

杉山　原宿は、若い女性が好むものだけを集めた店にするつもりです。ジャニーズグッズとか2.5次元のイケメン俳優のグッズとか。原宿は地下アイドルが育っているので、そのグッズも扱うつもりです。

――他のエリアの店舗だと？

杉山　池袋なら、女性向けにボーイズラブとか同人誌。御茶ノ水には音楽関係の店をつくろうとしています。将来的には、神田に古本のコアな店も出店したい。

あとは、本格的なミュージシャンの需要もあるので、そういうのを攻める店もいいかなと。岡村靖幸とか及川光博とか、長く活躍しているアーティストのグッズを全て集める。いずれの店も、必ずその地域地域で品揃えをダントツにします。

当社は各店、各カテゴリで圧倒的な品揃えができないなら、出店しません。秋葉原も、フィギュアやアニメCDの品揃えでナンバーワンだと自負しています。

都市部の利用者強化顧客数を増やす

――ところでエーツーは、ブックマーケットなどリアルの新古書店も100店ほど運営していますが、FC店も多く実店よりネット通販が強いイメージです。売上高180億円の内、これまでどのくらいをネット通販で稼いできたんですか。

杉山　ほとんど......8割程度がネット通販によるものです。

――ですよね。てっきり、エーツーはこのままネット通販｢駿河屋｣で伸ばしていくんだと想像していました。なぜ、ここへ来てその実店舗を？

杉山　駿河屋ブランドへの接し方を増やしたいんです。

ネット通販は顧客数をそれなりに持っていますが、人口対比で見ると地方が強くて都市部の利用者が少ない。ブランドは知られてから力を発揮するものですが、全国的に見ると駿河屋の知名度はまだ十分ではありません。実店舗をユーザーの近くに出していくことで、駿河屋全体の顧客数を増やします。

それと、人材獲得のためという意味合いもあるんです。現在、当社には社員とパートアルバイト合計で1300人いますが、まだまだ人手不足。しかし、募集をかけても実店舗が無いから一般の人にまったく知られていないんです。地元静岡から人材を獲得するためにも、実店舗が必要だと考えました。

30年後のエーツーも著作権物を売買

――他の中古メディア店は、古着や家電など商材を広げていますが、エーツーは。

杉山　著作物以外やらない方針です。古着や家電をやる予定はありません。

393号（2016/06/10発行） 7面,393号（2016/06/10発行） 9面