《骨董買取の技法16》"証書つき"は高くなる!?

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《骨董買取の技法16》"証書つき"は高くなる!?

2016年11月10日

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骨董買取の技法 タイトル

骨董買取の技法 第16回

鑑定は最低6万円以上の価値のものを

絵画のオークションカタログを見ていると、有名な物故作家の作品については必ずと言っていいほど『鑑定証書』がついています。道具に関してはあまりこのような制度はないですが、近現代の物故画家についての取引きにはこの証書が必要になります。これは業者間の交換会でも同様で、絵画の会では保証を求められます(贋物を売った場合は、罰金をつけて返金)。交換会などでどう見ても真作という場合も、鑑定証書が付属していた作品の方が高くなります。

この鑑定制度ですが、どのような機関や人物が行っているのでしょう?一般的に、作家の妻や子息などの親類がなることが多いです。また、その作家の作品を扱っていた画廊などが引き受ける場合もあります。しかし、現在一番の鑑定機関は東京美術倶楽部になります。HPを見ていただくとわかりますが、日本画ですと「川合玉堂、片岡球子、上村松園、平山郁夫」など、洋画ですと「藤田嗣治、梅原龍三郎」などで、そうそうたる画家たちの名前が並んでいます。ちなみに東京美術倶楽部というのは、我々の業界のいわば頂点の組織です。毎日のようにこの1F会場では、会員制の交換会が開催されています。非常に敷居が高いですが、この鑑定業務は営利事業です。きちんとアポをとって訪問すれば、会員でなくても問題はありません

平櫛田中の鑑定箱。娘の弘子氏による鑑定平櫛田中の鑑定箱。娘の弘子氏による鑑定

さて、この鑑定ですが費用はどれくらいでしょうか?倶楽部を例にとりますと、申込時に3万円必要です。そして、真作ということであれば鑑定証書発行費用ということで、3万円支払います。贋物だった場合でも申し込み時払った3万円は、勿論戻ってきません。ある作品の鑑定証書をとるには、6万円必要になります(藤田嗣治と上村松園は8万円)。つまり鑑定が必要になる作品というのは、最低でも6万円の価値がなくてはなりません。このご時世です。美術年鑑で数百万円の評価の作家の作品でも、数万円で取引きされている作品はあります。

また東京美術倶楽部以外の鑑定機関ですが、前述したように親族やその作家を扱っていた画廊が鑑定機関となります。「横山大観→池之端の横山大観記念館」、「岸田劉生→画廊主催の劉生の会」といった感じです。彫刻家の平櫛田中は、親族で個人名での鑑定です。

また、『大日本』など大そうな名称の機関の鑑定のついた絵画を、たまに見掛けます。そこには、号いくらという感じで評価額も掲載されています。このような絵画は、ほぼ例外なく無価値です。知識の無いお客に売るための演出といった感じでしょう。鑑定書や評価書といった証書に金額が入っている絵画は、まず価値がありませんので気を付けてください

次に陶器についてですが、陶器類も有名な陶芸家の作品には鑑定がついているものがあります。北大路魯山人の鑑定機関である銀座黒田陶苑が有名です。また、河井寛次郎は河井寛次郎記念館で鑑定してくれます。陶器でも絵画でも鑑定代は、最低でも3万円はとられます。現状の相場では、鑑定機関があっても売買相場が低く、作品によっては売上より原価と鑑定代が上回ったといったことも起こります。鑑定機関に依頼する前に、その作家の現状の相場を調べた方が賢明です。

藤生 洋藤生 洋

<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。

403号(2016/11/10発行)6面

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