大黒屋HD、ファンド傘下で再建
2025年11月10日
ブランド品のリユースや質事業を手掛ける大黒屋ホールディングス(東京都港区)は10月31日、SBIホールディングス系のPEファンド、キーストーン・パートナース(以下:KSP・東京都千代田区)を相手に第三者割当増資を行うと発表した。また同日、中間及び期末の業績予想を大幅に下方修正し、小川浩平社長の退任も発表。資金繰りの悪化から、業績不振が続いており、ファンド傘下で再建を図る。
通期業績予想を大幅下方修正
小川浩平社長は退任へ
資金繰りの悪化から業績の低迷が続いていた
大黒屋HD中核企業の大黒屋は1947年に創業。かつて関東の中古ブランド店と言えば「大黒屋」とも言わしめた名門企業で、同社を経て独立した経営者を多数輩出してきた。黄色の看板が特徴で、「質大(しちだい)」と呼ばれており、オレンジの看板の大黒屋は金券・チケットが主力で「チケ大」と呼ばれており、両社に資本関係はない。
業績が悪化したきっかけは、英国事業の撤退だ。2019年10月に英国子会社の「スピードローンファイナンス」の事業撤退を表明。これの撤退費用等で20年3月期には約10億円の特別損失を計上。加えて新型コロナの影響によりインバウンド需要が消滅し国内外で需要が減ったことで、翌期の売上が減少。営業CFで4億円、長期借入金返済で4億円、併せて約8億円の現預金の減少へと繋がった。以降、販管費の負担も重く、資金繰りの悪化から抜け出せない状態。在庫買取資金の不足で仕入れが減少、在庫も低水準が続き、業績が悪化していた。
大黒屋HDの26年3月期第2四半期までの連結売上高の見通しは49.8億円と計画値を3割強下回り、前期比横ばい。営業利益も赤字が継続している。通期業績においても同様で、連結売上高は計画値の約4割下回りそうな状況で改善の兆しは見られない。その要因について同社は、第1四半期に在庫積み増しに資金を投入できなかったこと、LINEを活用したAI査定「おてがるブランド買取」が予定通り進まなかったこと等を理由に挙げている。
資金不足の解消を図るために頼ったのがファンドだった。約43億6500万円の第三者割当増資を大黒屋HDが行い、KSP社が12月11日付で引き受ける。これに伴い、KSP社が株式の68.54%を取得し子会社化する。新株1株当たりの発行価額は9円で約4.85億株を発行。直近1ヵ月間の終値単純平均の同社の株価は35円で74.29%のディスカウントだ。新株発行による希薄化を考慮しても割安と言わざるを得ず、同社が追い込まれている状況がうかがえる。尚、新株発行により、現在筆頭株主である小川浩平氏の持株比率は18.59%から5.85%に下がる。
また、12月10日に開かれる臨時株主総会の決議により、小川浩平社長は退任。KSPの執行役員を務める岩岡迪弘氏が新社長に就任する予定だ。
調達した資金の内、5.5億円は金融機関からの借入返済、24.5億円は、在庫買取資金に。また、13.4億円は来年、M&A及び資本・業務提携に充当する。ファンド傘下で再建を図れるのか注目を集めそうだ。
第619号(2025/11/10発行)1面


