《皮革製品修復ラボ(24)》置いてあるだけでは売れません

検索

「皮革製品修復ラボ」

《皮革製品修復ラボ(24)》置いてあるだけでは売れません

2014年12月10日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

皮革製品 修復ラボLesson.24 中古の靴は売れる

日本人を研究した売り場づくりを

私はたまに、リサイクルショップに靴を売りにいくことがある。先日もあるリサイクル店に売りにいって、3足5万5000円で買い取ってもらった。その後店を覗きにいってみたが、なかなか売れないようだった。内心、置いてあるだけの不親切な展示のままだと売れないよ。と思ったが差し出がましいので口は出していない。が、靴を売るにはいいものを置いてあるだけではダメだ。マーケティングも重要なのだ。お客である日本人を研究して売り場をつくらなければならない。

トレジャーファクトリー横浜青葉店の高級靴の売り場トレジャーファクトリー横浜青葉店の高級靴の売り場。
木製什器で特別感の演出に成功している

先日、総合リサイクル店でなかなかいい売り場を見つけたので写真をとってきた。オールデンとトリッカーズの中古靴を販売しているコーナーがあり、ここだけ木製の重厚感ある什器をつかって雰囲気を出していた。靴箱を展示の小道具につかっているのもいい。ロゴが目立つので買取りの訴求にもなるだろう。

さらに、売れる吹き出しをつけると尚お客さんの背中を押すだろうと思った。何度かこの連載でも伝えてきたが、日本人には以下の特徴があると思う。

■日本人の特徴
①汚れ・キズ・匂いなど人のつけた履歴を嫌う
②うんちくに弱い
③限定ものに弱い
④ 「ド定番」が好き

特に男性は②の傾向が強いので、中古の靴もうんちくで売れる。例えばトリッカーズならこんな文句を添えればどうだろう。

『履きこなしの敷居は高いが、時間をかけて自分の相棒にする靴。生涯の友。男同士を体感できる一足』

なんのレコメンドもなくて買うのは、すでによく分かっている「靴好き」だ。リサイクルショップの既存客に買ってもらうためには価値を紹介して、欲しくなるよう仕向けなければならない。

このような紹介文は、詳しい人がいればオリジナルでつくってヴィレッジヴァンガードのように魅力的な売り場をつくってもいいし、詳しい人がいなくても大丈夫。靴の専門雑誌を買ってきて、それを参考にするもよし。それを切り抜いてPOPに使ってみるもよしだ。

①の汚れやキズなど履歴を消すことを中心に連載で述べてきたが、それだけだと「川口さん、やっぱり靴は売れないよ」と言うリサイクル業界の方も何人かいた。ある意味においてはその通りだ。靴は置いてあるだけでは売れる商品ではない。しかし、ひと手間かければ粗利額を稼げる商品に変わる。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

357号(2014/12/10発行)5面

Page top
閉じる