《皮革製品修復ラボ(21)》ビルケンシュトック売ってみて!

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《皮革製品修復ラボ(21)》ビルケンシュトック売ってみて!

2014年08月10日

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皮革製品 修復ラボLesson.21 ユーズド靴が売れる

くっきりついた足の跡は消せる

メンズファッション誌がこぞって表紙に使い特集を組みまくっているのが「靴」だ。

リユース市場ではメンズのスニーカーやワークブーツ系以外はあまり流通していない。しかし私は高級靴の中古ニーズを大いに感じている。これまで連載で主にブランドバッグをテーマに語ってきたが、次なるテーマ「靴」にしばらくお付き合いいただきたい。数万円の高級人気靴、これは中古でも必ず売れる。

さて、そこでまずは決して高級靴ではないが、中古の靴がいかに売れるか体感してもらいたいと思う。

夏にピッタリの「ビルケンシュトック」。ミランダ・カーをはじめとした今を華やぐモデルやエディター、日本の芸能人もこぞってはいているサンダルだ。新品価格は1~2万円ほどだろう。

ビルケンシュトックのサンダルビルケンシュトックのサンダル

人気が高いのに中古市場であまり見かけないのは、フットベッドのスウェード地にくっきりとついてしまう足の跡のせいだろう。

ここで価値を低く見積もるのは尚早だ。底材の減りさえひどくなければ、足指のタンパク汚れをキレイにしてしまおう。

中性洗剤をつけてゴシゴシこすり、ワイヤーブラシでこすると汚れがかなり落ちる。箔押しのブランドロゴは消さないように気を付けて。

本底は水やカーショップなどで手に入る界面活性剤入りのシリコンスプレーなどで仕上げて。アッパーの革をクリームでケアすれば、すっかり気持ちいいサンダルに生まれ変わる。

古着を販売しているなら、これも流行のショートパンツ(ボタニカル柄もイイネ!) などとコーディネートして紹介すれば、すぐ売れるだろう。

取り扱う上での知識として、構造も説明しておこう。大きくわけて2層になっており、足をのせる箇所は「ブルーフットベッド」と呼ぶ。足の裏の凹凸に合わせたコルク材だ。足を押さえるスウェードライナー(革の部分) がついている。フットベッドの下にはEVA (エーテル、ビニール、アセテート) のクッション材で接地させる。

ビルケンは人間の足の形を追求しており、いまや技術国ドイツを象徴するブランドとして、そのアイデンティティーごと認知されている。

さて、靴がリユースで売れない原因をヒアリングすると「汚い」「臭そう」「なんとなく気持ち悪い」「使用感が一目瞭然」などの意見が聞こえてくる。しかし、現代のシューケア技術を持ってすればこれは何の問題もなく解決するのだ。

例えば大流行のUGGのムートンブーツ。これなどユーズドだと足を入れるのさえ躊躇うお客さんが多いと思う。しかしこれは洗濯でふわふわにすることができる。特殊な溶剤を混ぜた水で洗って消臭、防汚加工すれば中はさっぱり、外の汚れも無くなる。

クリーニング除菌済み表示をつければ売れるようになるだろう。

次回も、靴をテーマに詳しく説明していきたいと思う。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

349号(2014/08/10発行)12面

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