《皮革製品修復ラボ(16)》買取りとリペア選べる店にしよう

検索

「皮革製品修復ラボ」

《皮革製品修復ラボ(16)》買取りとリペア選べる店にしよう

2014年01月30日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

皮革製品 修復ラボLesson.16 リユース&メンテナンス

セレブ層にアクセスするにはどうする?

今年は、「リユース&メンテナンス」をリサイクルショップの皆さまに提案したい。

革製品のリペア・メンテナンスを行う当店には、所謂セレブのお客さんが多く訪れる。外商が持ってきたものを買っているようなお客さんだ。曰く、「いつも同じものを持っていられない」「チョイ古モデルはセレブにとって屈辱」なんだそうだ。だから「使う予定の無いキレイなバッグがいっぱい家にあるんだけど」とおっしゃる。ではなぜリサイクル店や質店に売らないんですか?と聞くと、「私が行くところじゃない」とか「シャネルのバッグを持って、なぜ並ばないといけないの?」と言うのだ。

近所の人に会ったらどうしようという後ろめたさもあるそうだ。あるリサイクル店はお客に「売るけど、このお店で売らないで。近所の人に売ったとバレたら恥ずかしい」と言われたそうだ。これが実情だ。だからこの客層になかなかアクセスできない。

では、なぜ美靴工房にはやってくるのか。それは、メンテナンスしながらブランド品を使うのはセレブにとってもスタンダードなことだからだ。リペアはお医者さんに行っているのと同じ感覚で、何の恥ずかしさもないようだ。

私は日々こういう話を聞いて、もったいないなと思っている。二子玉川界隈だけでも、こんな理由で眠っている高級バッグが500や1000はあるだろう。そこで冒頭の提案だ。リサイクルショップにぜひ「メンテナンス」を大きく打ち出してほしい。修理・リペアは小売と違って省スペースでできるので、金プラチナ買取り店にも合うと思う。

リペアでアクセスして、リユースも提案するのだ。エルメスのケリーを修理したら1.8万円。買取りなら30万円。どちらにしましょうか?と。時計ならすでによくあることだ。「オーバーホールなら3~5万円です。お買取りなら、20万円のお支払いになります」と言えば、あとはお客さんが選ぶ。リユースとリペアを選べるのが、今の時代感にあっていると思う。

実はリペア専門店よりも、リサイクル店の方が強いとさえ私は思っている。修理と買取り、両方の見積もりが出せるからだ。相場や真贋を知っているからこそできるリペアもあるだろう。

リサイクル店の皆さんは、もしかすると長く使ってもらいたいという気持ちは無いのかもしれない。それより早く売ってほしいのかもしれない。しかし、これを隠して(笑) リペアでブランディングしてみてはどうだろうか。当店のお付き合い先のブランドリサイクル店には、少しずつこういう向きもある。

リペアすることに抵抗感を示すリユース店や質店もある。なぜなら、ブランドホルダー以外が製品に手を加えたら「本物ではなくなるのでは?」という見方があるからだ。確かに下手な業者の作業に問題外だ。しかしちょっとキズがあるだけでそのバッグの機能は損なわれていないのだ。高級車に乗っていて、凹んだら板金屋に出さずに廃棄したりするだろうか。穴が開いたので直したらニセモノと言われるのはおかしな価値観ではないだろうか。

デリケートな問題だが、私は靴やバッグを愛する人間としてそう考えている。

真贋判定と相場だけでは差別化が難しい。リペア技術を獲得するのはいかがだろうか。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

336号(2014/01/25発行)5面

Page top
閉じる