《皮革製品修復ラボ(14)》「手探り」すると手垢がつくことに

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《皮革製品修復ラボ(14)》「手探り」すると手垢がつくことに

2013年11月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.14 リピートされる定員のつくり方

コンディション維持する使い方とは?

10月25日号のリサイクル通信で、「革製品と衣類の再生スペシャリストがユニットを組み、リサイクル店に技術提供や講習会を行っていく」と、私たちが新たに始めた取り組みが取り上げられた。

そこでも触れたが、ユニットで協業する高級クリーニング店「はなこや」と、当店「美靴工房」の2社には、洋服やバッグ、財布など月間200点の再生依頼がリサイクル店から寄せられている。買い取ったものをそのまま販売するのではなく、修理やメンテナンスをして販売するリサイクル店がどんどん増えているのを感じる。実は、この連載をはじめたのもそんな背景があったからだ。

リユースのプロと、再生のプロが結びつけば想像以上のバッグや衣類たちを再び甦らせ、流通できるようになると感じている。

さて、では前回からの続き「リピートされる店員をつくるトーク事例集―保管方法編」に入ろう。

『エナメル製品は単独で、他のバッグとは離して保管してくださいね』

エナメルは、革や合皮の上に樹脂ラミネートをしたものだ。圧力をかけるとベタベタに変化して他の物にくっついてしまう。温度や湿度もよくないので注意しよう。エナメル製品にどんなものがあるかと言うと、ヴィトンのヴェルニシリーズなどがそう。店員は当然知っているが、一般のお客さんの中には革やビニールの感覚で使っている人も多い。

こうしたトークを展開しながら『明日からは、バッグを使うためのアドバイザーとしてお付き合いくださいね』などとお客さんにお伝えするといい。困った時に相談できる店、店員になれば必ずリピートされる。

ここまでで、保管方法のトーク集はひとまず終了。次からは、使用方法のトーク事例を紹介していく。引き続き活用してほしい。

『バッグは手探りで開けようとせず、ファスナーや金具を目視してください』

なぜ?とお客さんも聞きたくなるのではないだろうか。手探りであけようとしていると、金具近辺の革を何度も手でなでることになり、手垢がだんだんついてしまうからというのが理由だ。

『乗り物に乗る時は、前に抱えるといいですよ』

接触やキズを避け、ストラップも守ることができる。関連して「常に4つ角をぶつけないように」と添えてあげてもいい。角が一番染料が剥げたりキズがついたりしやすい場所だからだ。

商品を購入してくれたお客さんに、プロとして保管法や使い方を教えてあげよう。「不安」「躊躇」「迷い」を接客で払拭できる店員にお客はつく。

次回も、トーク事例の使用方法編をお伝えしていく予定だ。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

332号(2013/11/25発行)4面

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