《皮革製品修復ラボ(13)》使い方や保管法解からず不安

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《皮革製品修復ラボ(13)》使い方や保管法解からず不安

2013年10月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.13 リピートされる定員のつくり方

「そこまで」アドバイスできる店員にお客付く

前回に引き続き、リピートされる店員をつくるトーク事例集を紹介していこう。

繰り返すが、説明書の無いブランドバッグだからこそ、メンテナンスの仕方や保管方法をプロとして伝えられる店員がお客さんに支持される。

下のセリフと解説を覚えて、実際の接客で使ってお客さんの信頼を獲得してほしい。

『お手入れする時には、使い古しのパンストで 乾拭きしてください』

汚れがつまると、革が呼吸できなくなり劣化する。埃や汚れを払ってやるだけでバッグはグッと長持ちする。ストッキングは繊維のキメが細かく、滑りがいいため革にストレスを与えにくい。また、伸縮性が高いため細かい部分まで拭きやすいのでオススメ。逆に、タオルは繊維が粗く革にキズをつけてしまうので避けよう。汚れだけでなく、くもりもとれるので「お磨き」に利用してもいい。

『ショルダーストラップと本体は、接触させずに保管してください』

革同士を接触させると、貼りついて色がベロベロとはげてしまう。また、紐の重みや圧力で「あたり(跡)」もつく。特に金属チェーンは重みがあるので要注意だ。本体と接触しないよう吊り下げて保管するのがベスト。できなければ、間に薄紙やエアパッキンを挟み接触を避けよう。

『バッグの口は開けて通気性を良くするといいですよ』

通気性を良くして、中ベタの進行を防ぐ。内張りやプレートに使われるポリウレタンは、「密閉に弱い」と覚えておこう。湿気がこもらないように気をつけるべし。ただし、バーキンやケリーなど開けっ放しにしておくと重みで型崩れする製品もある。大事に使うなら、時々開けて扇風機をあてている人もいる。「我が子のように」「うちのワンちゃんのように」暑いと言えば風をあててあげるのだ。「愛情を持って育ててあげてください」と一言添えてあげるのもいいのではないだろうか。

バッグを買った後に、どのように使用・保管することがコンディション維持に繋がるのか。売りっぱなしではなく、そこまでアドバイスできる店員のもとに、お客はまた訪れる。

例えば車を購入した際、メンテナンスや保険などギャランティーの説明は不可欠だ。これがないと安心して車を買えないし乗れない。

中古ブランドバッグも、お客さんの心理は似ている。使い方も保管の仕方も分からなければ不安になる。安心して購入できる店になるべきだ。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

330号(2013/10/25発行)4面

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