《皮革製品修復ラボ(06)》バッグ保管は下に置かず吊るすこと

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《皮革製品修復ラボ(06)》バッグ保管は下に置かず吊るすこと

2013年03月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.06 会話術シリーズ

お客さんと会話し『相談』持ちかけられる店に

前回から「修復の実践」に入ったが、長丁場になるので『リサイクル店』の現場で役立つ情報を少しずつ挟み込んで紹介しようと思う。

今回は、店頭でお客さんに話すと喜ばれる「製品の保管方法」についてだ。

革製バッグの保管には、以下のような三大原則がある。

①湿気は厳禁    ②置くよりつるす    ③間をあける

詳細を説明しよう。

革そのものは保湿クリームでケアして、保管はドライな場所がベスト。玄関や押入れは湿度が高いのでNGだ。

直射日光の当たらない場所に、掛けておくのが正しい保管法。下に置くと、バッグ自身の重みで「クタッ」となり型が崩れる。

どうしても置きたい場合は、新聞紙を型くずれしないように詰めて、金具やファスナーなどもしっかり留めて保管しよう。

バッグは何とも付かないようにする。短時間なら構わないが、色移りとアタリ(色落ち) の恐れがあるからだ。もしくっ付ける場合は、間に柔らかい紙や布を挟みこもう。

持ち手の傷みが気になる場合は、右写真のような用具をつくるといい。100円均一でS字フックを買ってきて、使い切ったガムテープの芯を組み合わせるだけで簡単にできる。これを使えば取っ手の丸みをキープできる。

こういうプチ情報は、お客さんの関心も高い。

デイリーのお手入れも紹介する。

まず使う前のプレケアだが、持ち手に撥水スプレーをしておけば手垢の付着が防げる。毎日使っているバッグなら週に1度は撥水スプレーを全体に。摩擦や埃、雨などから革を守ることができる。

使用後は柔らかい布で乾拭きして汚れをとり、3ヵ月に1度は保湿クリームを塗る。保湿クリームや撥水スプレーは粗悪なものだと皮革の呼吸を妨げ、劣化の原因になるので、厳選しよう。

買取が集まりづらい昨今だが、「あの店に売りたい、あの店員さんなら信頼できる」とお客さんの顧客化に成功している店もある。そういう店の店員は売りっぱなしにせず、お客さんと会話し、相談を持ちかけられるような関係を築いている。「製品の保管法」はその糸口に最適だ。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

316号(2013/03/25発行)11面

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