《皮革製品修復ラボ(02)》キャビアラインは塗りつぶさないよう

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《皮革製品修復ラボ(02)》キャビアラインは塗りつぶさないよう

2012年11月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.02 見分け方を知る

汚れ・シミ・カビはほぼ修復可。買い取るべき!

今回は、『メンテコストをかけても買い取るべき中古革製品の見分け方』をレクチャーしたいと思う。

店頭に持ち込まれる革製品のうち、補修に関して見るべきポイントは汚れ・シミ・キズ・臭い・カビ・ささくれ・凹みの7点だ。

この内、汚れ・シミ・カビは簡単に補修できるケースが多いのでほぼ買い取っていいだろう。問題の箇所を除去、あるいはクリーニングした後、現在の製品と同じ色を調整しカラーリングすれば甦る確立が高い。カビは除去後再発防止処理も行う。

次に、見分けが必要なのが「キズ」だ。キズは、例えば引っかき傷のような浅いものであればOK。しかし、深くキズが入っているものはNGと判断する。下のイラストを見てほしい。

キズのまわりにヤスリをかけ、表面をフラットにして色を乗せていくのがメンテナンスのおおまかな流れだ。キズが深いと、少し削ったくらいでは表面を滑らかにすることができない。革製品のメンテナンスは凹凸に弱いのだ。

臭いも、最近は臭いの元から分解できる優秀な消臭剤が発売されているのでほとんど買取OKと見てよいだろう。当社でも専門剤を発売している。

最後にヘコミ。これは修復できないのでそのままで売れるようであれば買取可能だが、状態を戻して売ることは諦めた方がよい。

キズがたくさんあったり、カビが全面に付いていたりしても、人気商品であれば高値で売れるケースがある。メンテナンス可能か、またメンテコストをかけても採算が合うのか見極めることでビジネスの幅はグッと広がる。

第一回に書いたように、1.5万円のコストをかけて70万円で売れることもあるのだ。

注意すべき点もある。リサ通読者の皆さまの目的は、ズバリ現状より高く売ることだろうと思う。

しかし、高く売るためのメンテナンスがその逆を生み出していることもあるのだ。

最近当社では、他の色補修業者が手掛けた製品の、作業やり直しを手がけることが増えている。オリジナルからかけ離れプライスタグが付けられなくなったものに出会う。

例えば、シャネルのキャビアラインの革表面のつぶつぶを埋めるほど厚く補正してしまい見た目の風合いが変わってしまったとか。ボックスカーフのケリー(ヴィンテージ含む)のキズを色補修しようとしてすべてエアブラシやスプレーガンで事もあろうか吹き付けてしまいテカテカ厚塗りになってしまったとか。長財布ベアンのステッチを一部染色してしまった...など。

場合によりキズなどはあえてうっすら残し全体的な使用感を残す方が自然で売りやすい場合もあるし、むしろ何もしない方が売れることもあると聞く。色補修しました!的なコンディションは逆にイヤがられる傾向が高い。いずれにせよ作業した事による価値低下はあってはならない。

他社に依頼する場合は、信頼できる事業者をパートナーに選ぶことが重要だ。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

308号(2012/11/25発行)10面

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