《皮革製品修復ラボ(01)》補修でバーキン査定額7万円アップ

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《皮革製品修復ラボ(01)》補修でバーキン査定額7万円アップ

2012年10月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.01 ニーズを知る

汚れやキズを嫌う日本女性が重視する「見映え価値」

8年ほど前、フジテレビ朝の情報番組「とくダネ」が美靴工房に取材に来た。

キズやスレのあるボックスカーフのバーキン35を買取店に査定させ、色補修してからもう一度持ち込み査定額がどのくらい上がるか試す企画で、7万円アップしたことを視聴者に声高々にアピールしていた。

日本中からの問合せが殺到し、大量のスーパーブランドの商品が送られてきた事は言うまでもない。そしてこのころから買取り商品やオークション落札商品の「見映え価値」を上げることが本格的に始まったと記憶している。

ところで、時計には時計修理士という専門職がある。リストウォッチのメンテナンスと修理を行う技術者だ。一般ユーザーや時計店などの依頼を受け活躍している。

自動車には板金や整備などの技術者がいる。こうした高額品を長く使い続けるための専門職があることは広く知られているところだろう。

ブランドバッグにも、長く使っていただくため。そして見栄え価値を上げるための専門職がある。皮革製品の修理・修復を行っている私たち美靴工房のような事業者だ。

当社はもともとブランドホルダーからの依頼で消費者の所有するバッグや靴の修理を行っていたが、特にこの1年で質店やブランドリサイクルショップからの依頼が激増してきた。

時計や自動車などと同様に皮革製品でもメンテナンスと修理の需要が高まっている。

そもそも日本人女性は皮革製品とりわけ靴、バッグ、レザーウエアに対する汚れ・色焼け・キズを皮革の味わいと考えずトラブルとしてしまうところがヨーロッパとは違う。

例えるならそれは彼女たちの顔やボディー同様に考えるアンチエイジング嗜好なのだ。常にハンドバッグやサイフなどの小物は新しい(若い)状態が良しとされ、手垢や雨ジミをあたかも自分のお肌に付いたようにイヤがる。

スピードは変わらないのに汚く凹んだクルマに乗りたがらず、正確に作動しているのにキズのついた腕時計を見たくない...まさにハンドバッグはアクセサリー感覚、物を入れるだけではなく見せるものだから見栄えたいのだ。ベンツやBMWに乗りたいのは機能だけではないのと同じ。しかもぶつけてなくキレイな。

美靴工房では多くのブランドエージェンシーや顧客のお陰様をもって飛躍的に技術進歩し、その人材指導にあたっている。また、そのことにより、リサイクル・質業界では補修前提の買取買付が実施され、その利益率や仕組みが変わった。

ある一社の例を紹介しよう。30万円で買い付けたエルメスのバーキンを当社のような専門業者が修理し1.5万円のコストをかけて、70万円で売れるそうだ。修理前なら想定で50~60万円の販売価格なので10~20万円利益額がアップしたことになる。

ユーズドブランド品大国の様相を呈し、客層もさらに広がっていく中、当社ではカビや臭い対策も含めた修理やメンテナンスの技術力を日々磨いている。

次回以降は自社でできる商品価値を上げるノウハウや買い上げ客へのアドバイスなど、小売り業の役に立つ情報をお伝えしていく。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

306号(2012/10/25発行)5面

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