《着物リサイクル春夏秋冬》第222回 たんす屋慶祝セットを企画

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《着物リサイクル春夏秋冬》第222回 たんす屋慶祝セットを企画

2019年03月09日

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中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」。

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東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長

1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。

現代に合わない無地着物をカジュアルに
リユース着物をリノベーション

新元号選定の6つのルール

いよいよ4月1日には、新元号が発表される。新元号は、有識者による会議でずいぶん以前から検討を重ねているようだ。ただし、新元号選定にはルールがあり、それに従って決めるという。ちなみにそのルールとは以下6つである。①国民の理想としてふさわしいような良い意味を持つものであること②漢字2字であること③書きやすいこと④読みやすいこと⑤これまでに元号または「おくりな」として用いられていないこと⑥俗用されていないこと。

⑤に出てくる「おくりな」とは、諡の訓読みで、「贈り名」を意味するそうである。意味は主に帝王、相国などの貴人の死後に奉る、生前の事績への評価に基づく名のこと、とウィキペディアに記載されていた。更に、これ以外にも暗黙のルールがある。それは明治、大正、昭和、平成の頭文字「M、T、S、H」とかぶらないことだ。今、ネットで予想されている元号を調べてみると、安延、永明、安化、永光、建和、建安、弘永、文承、安長、弘徳、文弘などが出てくる。たしかに頭文字は「A、E、K、B」でかぶらないようになっている。

そして5月1日には、新天皇の御即位である。ちなみに、新天皇は神武天皇から数えて126代目の天皇陛下になられる。今年が皇紀(神武天皇即位の年を元年とする紀元)2679年であるから、天皇陛下の平均在位は21.3年ということになる。これこそ世界に誇れる日本の歴史ではないだろうか。今年の5月1日は、本年限りの国民の祝日になる。更に、今上天皇の御退位の4月30日と5月2日も休日になる。結果的に今年は4月27日から5月6日まで、なんと10連休になる。これは今上天皇が生前退位を望まれた結果の恩恵ではないだろうか。我々は今上天皇の31年に及ぶ在位に感謝し、新たな天皇陛下の御即位を心からお祝いしたいと思う。

本決算セール時は慶祝ムード一色

さてそこでたんす屋の商売の話であるが、5月が東京山喜の本決算なので、毎年4月中旬から5月末まで店頭
で本決算セールを展開している。今年はちょうどその時期に日本中が新天皇陛下の御即位をお祝いする慶祝ムード一色になるであろう。ちなみに、今月24日から28日まで開催する「たんす屋二十歳の記念祭」からすでに、冠に慶祝をつけさせて頂いている。これは、たんす屋が20周年を迎えられたお祝いとしての意味もあるが、今年一年は、御即位の言祝いを慶祝で使わせて頂こうと考えている。

さて5月の本決算セールが新天皇の御即位とタイミングが合うので、今から本決算セールに向けて「たんす屋慶祝セット」を計画している。このセットは、たんす屋らしくメインの着物をリユース着物のリノベーションで制作している。リユース着物のリノベーションとは、従来のリユース着物の素材感を活かしながら今のお客様にフィットする着物にする事である。その為に洗い張りをして、場合によっては染め替えし、裏地を交換して仕立て直す。

リユース着物の特徴は、着物市場が絶好調の30~40年前に作られているので、生糸も生地も織や染めの加工技術も現在の着物と比較して優れたものが多く存在している。しかし残念ながら、これらのリユース着物は、色目が今の消費者にはしっ くりこない場合が多く、更に裏地(八掛)の合わせ方が今の時代と少しずれている。そして何より着物の寸法がほとんど小さくて、今のお客様の要望に応えられない。

良い生地でも色無地は売れない

リユース着物のリノベーションは、これらの問題を一気に解決してくれる。「たんす屋慶祝セット」は、このリユース着物のリノベーションバージョンを中心にして帯と帯締め、帯揚げをトータルでコーディネートしたセットを計画している。アイテム的には、無地着物、小紋、大島紬、紬を予定している。いずれもカジュアル着物である。無地着物は、従来存在しないアイテムだ。

これまで無地と言えば、色無地着物と言ってお道具として着物業界が最も売ってきた着物である。この色無地着物はフォーマル着物で背中に家紋を入れることで「付下げ(訪問着を簡略化した着物)」より格上になり、お茶席にも着られる万能着物であった。しかしながら、現在ではお茶席を除けば着用機会が激減しており、良い生地が使われているのに色目、家紋、寸法、八掛の合わせ方の問題で売れなくなっている。この色無地着物をリ ノベーションして、現代の色目に染め替えて、家紋をなくして、寸法を今のお客様に合うサイズにし、八掛の合わせ方をモダンにして仕立て直すことで、カジュアルシーンに着られる無地着物に作り替える。

更に帯、帯締め、帯揚げまでトータルコーディネートを行い「たんす屋慶祝セット」としてこの機会に発表する。新たな元号のスタートに合わせてこの「たんす屋慶祝セット」を、二十歳を迎えるたんす屋の新たな中心的商材にしていきたいと思っているが、いかがだろうか。

18p-あ.jpg▲無地着物コーディネート

第458号(2019/02/25発行)18面

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