《海外の2次流通 連載Vol.23》イギリス、ウェールズの田舎町が古書店街として発展

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《海外の2次流通 連載Vol.23》イギリス、ウェールズの田舎町が古書店街として発展

2019年06月07日

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ウェールズの田舎町が古書店街として発展
戦後イギリスで最も成功したツーリズム

Hay-on-Wye(ヘイ・オン・ワイ)

hay_on_wye_town.jpg▲ヘイ城中庭にある書店。屋外の塀に書棚が設けられている

1961年のブースの古書店が聖地の始まり
町の人々も次々と専門的な古書店を開業

東京の神田古書店街や北京の琉璃廠(リウリーチャン)、パリのカルチエ・ラタン、ロンドンのチャリング・クロス・ロードなど、世界に名を知られる古書店街の大半は都市にあるが、Hay on Wye(ヘイ・オン・ワイ)はアクセスの悪い田舎町が古書を中心に町おこしに成功した珍しい事例である。

絶版や希少な書籍を扱う書店が30軒以上あり、"古書の聖地"として知られる人口約2000人のこの町は、イングランドとウェールズの境目のポーイスカウンティにある。ブレコンビーコンズ国立公園内にあり、市街はワイ川に面する自然豊かな美しい町だが、最寄りの都市は約35km離れたヘレフォードで、交通の便は悪い。戦後、地場産業が廃れて若者は都市へ出て行き、1963年には鉄道も廃線となって、衰退する一方だった。

この町を救ったのは、リチャード・ブースという一人の男だ。ブースは1961年に廃業していた映画館を、翌1962年に旧消防署を買い取り、古書店を開業した。これが本の街の始まりである。

観光局と協同のマスコミ戦略に成功
兼高かおるを「独立国」ヘイの公爵に

1971年には古城ヘイ・キャッスルを1万ポンドで購入し、城内はもとより城外にも書棚を設けた。

まもなく、町の他の人々も自分たちの書店を開くようになり、その多くはレア、ヴィンテージ、子供向け、歴史的な墓地など特定の分野を専門にしていた。

ブースはマスコミ戦略にも長けており、ウェールズ観光局と協同してヘイを古本の町として宣伝した。1977年にはヘイの独立とEEC脱退を宣言、ジャーナリストの兼高かおるを「独立国」ヘイの公爵に任命したり、1983年に総選挙に出馬したりするなど、話題を振りまくたびにヘイの知名度は上がっていった。やがて古書店に加えて、骨董品店やレストラン、B&Bなどが増加した。

文学祭は50万人が押し寄せる人気イベント
戦後イギリスで最も成功したツーリズム

1988年から年に1度、5月の下旬に約10日間開催されるヘイ文学祭には、作家の朗読会や講演、セミナーなどが開かれ、参加者数万人、来場者推定50万人が押し寄せる。アメリカ合衆国元大統領ビル・クリントンや俳優ジェーン・フォンダが自著を宣伝したこともある。このシーズンだけでなく、今では1年を通じて観光客が絶えない観光地となり、戦後イギリスで最も成功したツーリズムに数えられている。

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