フリマアプリ仕入れ実質違法、警視庁見解「古物法の本人確認等の履行困難」

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フリマアプリ仕入れ実質違法、警視庁見解「古物法の本人確認等の履行困難」

2021年09月24日

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近年取引量が急拡大するフリマアプリ。運営会社は個人間売買の場としているが、中には個人だけでなく法人の古物商が仕入れの場として活用しているようだ。ただ、古物営業法上必要な本人確認を行うことが極めて難しいと見られ、警視庁はHP上で注意喚起を図っている。ネット上では「古物商許可さえ取得すれば問題ない」等といった誤った情報が出回っており注意が必要だ。

ネット上は勝手な解釈で情報が錯綜

警視庁見解「古物法の本人確認等の履行困難」

今年6月、警視庁のサイトが更新され「古物営業法等の解説等」のページに、ネットオークションやフリマアプリを利用した取引であっても相手方の確認は必要との文言が明記され、ネット上等で話題になっていた。ネット上では「古物商許可を取得すれば問題ない」、「運営側が本人確認を厳格に行っているから不要」といった情報が散見されていた。

警視庁生活安全総務課に記載の背景を問い合わせたところ、「昨年から今年にかけ、新規許可申請件数は増加傾向に有り、オークションサイトやフリマアプリを利用して古物売買を行う営業形態を予定している申請者も多く見られます。こうした方々は古物営業法に規定された『非対面取引における相手方の新規の確認方法』などの履行が困難であることを申請時に初めて知り、申請を断念したり、営業形態を見直すことになっています。そこで、許可を申請する前に、法令上の義務履行が可能であるかを確認・検討する機会を提供し、適正な古物営業を行っていただくために、掲載しました」との回答だった。

つまり、ネットオークションやフリマアプリからの仕入れであっても、消費者から非対面で買取を行う際の本人確認と同様に行う必要があるということだ。取引金額が1万円未満の場合、一部商品を除いて本人確認は不要だ。

ただ、自治体によって異なるが東京都の場合、条例により青少年が保護者の委託を受け、同行または同意を得て古物売却をすると認められる場合を除いて、青少年から古物を買い受けてはならないと規定されている。つまり、フリマアプリ等で仕入れる場合、購入相手先が未成年の場合は、保護者の同意が得られているか等を確認する必要があるということになりそうだ。

フリマアプリにはチャット機能があるものの、年齢の確認方法について警視庁の見解では「条例上規定されていないが、口頭確認や電子メールの返信といった相手方の言葉のみに準拠するような方法は実効性のある十分な確認方法とは言い難い」としており、身分証などで確認する必要がありそうだ。フリマアプリでは匿名取引が一般的なため、出品者に身分証の提示を求めることは現実的に考えて極めて難しそうだ。これらの理由により、フリマアプリ等で古物商が古物営業法上適法に仕入れを行うことは極めて難しいということになる。

古物商でなく、個人としての購入だとしても営利目的で反復継続する場合、古物営業許可が必要だ。個人として反復継続取引を行えば無許可営業となり、古物商なら買い受け(仕入れ)の際に、本人確認が必要となる。

本人確認の重複は本当に必要なのか?

リユース企業は、手間やコストがかかっても法令を遵守した買取を行っており、個人であっても古物商である以上は例外ではない。ただ、古物営業法が実態に即していない面もありそうだ。フリマアプリやネットオークションでは、出品者は運営会社が本人確認を行った上で出品を行っており、プラットフォーマーが協力すれば盗品等が発覚した場合、対応が可能と考えられなくもない。古物商が本人確認を行うことは、運営会社と重複することになり、本当に必要なのかは疑問が残る。古物営業法等に詳しい新田・天野法律事務所の新田真之介弁護士は「確かに盗品の流通防止という古物営業法の趣旨からすると、フリマアプリ内で行われている『本人確認済』の出品者からの購入や古物商許可を受けて店舗を営むリユース店からの店舗せどりであれば、実質的には問題は大きくないようにも思える。しかし、現行法では買取をする古物商が自ら相手方の本人確認を行わなければならないとされている以上、古物商が独自の解釈をして本人確認を懈怠(けたい)すると違法であることに変わりは無い。『どうせ捕まらないだろう』と後ろ暗いスキームを続けるのではなく、現行法でも適法に可能なスキームの模索や、個人古物商たちがまとまって組合や協会などを結成し、時代にあった法改正を働きかけていくなどの行動が求められる」と話す。

ネットオークションやフリマアプリ等での仕入れが実質違法・違反となるポイント

古物営業法違反身分確認で検挙も

警察庁によると、令和2年に古物営業法違反で検挙した数は、20件17人で、その内、無許可営業が12件11人、身分確認が4件5人となっている。フリマアプリ等での仕入れが困難な場合、どこで仕入れを行えばよいか。代替案の1つとして、古物市場を挙げる。古物市場とは、古物商のみが参加できる売買の場だ。多数の古物商が古物市場で仕入れを行っており、ネットで開催しているところもある。

本紙では今後もこの問題について扱っていく考えだ。

実態に即した修正は必要

見解を聞く

できるだけリユースの市場をクローズドにしたくないため、実態に即した修正は必要だろう。消費者から買い受ける際に一度、本人確認を行っていれば、同業者間の売買は不要であったり、古物マーケットの入口で一度確認できていれば十分ではないかと。CtoCもプラットフォーマーが出品者の本人確認を行っており、それでよしとする。あるいは古物商が行う本人確認は、取引年月日やID、取引情報等を残す形でよしとする等、古物営業法上の趣旨である盗品流通を阻止できる状況を維持した上で、チューニングした方がいい。

一般社団法人日本リユース業協会 堀内康隆会長一般社団法人日本リユース業協会
堀内康隆会長

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第520号(2021/9/25発行)1面

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