《皮革製品修復ラボ(48)》偽物問題さえ無ければ広がる?

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《皮革製品修復ラボ(48)》偽物問題さえ無ければ広がる?

2017年09月04日

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皮革製品 修復ラボLesson.48 総まとめ

高額なのにアフターサービスの無い革製品

唐突だが、筆者は大のクルマ好きである。

80年代つまり二十代の頃に、フランスの靴ブランドに勤めていた頃からであった。ヨーロッパ車が好きなため、当然ながらフランス車(プジョー205GTIの1.6やシトロエンBXのTRIなど)を複数台所有し、ついにはイタリアのアルファ75にまで手を出し、いつ故障するか分からずレッカー代を持って出掛けていた。とにかく壊れるのである。

時のディーラー網はメルセデス以外ほとんど整備されていなかった。

クルマが止まってしまったので販売店に電話をすると、「とにかくこちらまで来て下さい」などと言う始末。止まってしまっているのに......でも、どうしても乗りたかった。同じ車種のオーナー同士でどんなに苦労したか、困ったかの話を武勇伝として情けながりながら、どこかお互いに得意になって語り合ったものだ。

現在では、世界中のあらゆるクルマがそれ自体進歩し故障が減った。そしてディーラーがサービスパッケージをつけて売るためとにかく安心して乗れるようになった。しかもメンテナンスがマニュアル化され、点検もバッチリしてくれる。輸入車のシェアもかなり伸びた。やはり売るため、売れるためにはメンテ付き安心販売−−すなわちアフターサービスが必要だ。

もちろんクルマだけに関わらずバイク、オーディオや電化製品、スマホやパソコン、腕時計からヘタすると住むところに至るまで購入時に保証やメンテパックがつく。また、メンテナンスやリペア、クリーニング済みになれば再販もしやすく値もいくらか高く設定できるだろう。クルマで言えば修理、板金、磨き、内装クリーニング済みのピカピカな中古車だ。

さて、前置きが長くなったが、中古車や高級腕時計ほど高価格なレザー製品は多々あるが、これらは未だにアフターサービスがない。

その訳はいくつかあるが、なにより熟知した業者が他アイテムと比べ圧倒的に少ない。しかもその仕上がり具合が業者によってまちまちであり偽物を連想させてしまう。要するに機械とは異なりマニュアルが無く、さらに革という天然素材には独特の風合いがあり敏感な感性を必要とするからだろう。エイジングとして愛着を感じるか、単に汚くなったと感じるかの個人差もある。

加えて、いくつかのラグジュアリーブランドは自社修理以外は認めない。そのため商品価値を著しく落とすくらいなら、とそのままリユースされたりしている。......レザー製品を取り巻くメンテナンスの観念はまだまだだ。

リユース業界においては、顧客やユーザー側に立ち、積極的にリペアに取り組む会社も増えてきたようだ。だが、自社の安全や営利を重視する所がそれでも大半。購入後に顧客の責任で美装、長持ち目的のメンテナンスを行うといったあり方はしばらく続くのだろうか?偽物問題さえなければ、レザー製品もクルマや腕時計のようにメンテ済みが有り難がられるのだろうか?

ただ、少なくとも買う側は本物のブランドバッグで、さらにしっかりメンテナンスをされたものを買いたいと思っている。そう、クルマの点検や車検のようなパッケージを欲しがっている。難しい問題だ。

川口 明人氏
≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

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422号(2017/08/25発行)7面

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