マルチチャンネル化で「適正な販路を見定める」 SOU嵜本社長が語る成長戦略

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マルチチャンネル化で「適正な販路を見定める」 SOU嵜本社長が語る成長戦略

2018年05月13日

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設立からわずか6年強で322に東証マザーズ上場を果たしたSOU(東京都港区)。嵜本社長の「元Jリーガー」という異色の経歴にも注目が集まっている。本紙325日号掲載の嵜本社長インタビューの後編。紙面掲載の前編では、上場の狙いや成長戦略、昨年サービスを開始したアプリ「miney」などについて聞いた。後編では、買い取り専門店「なんぼや」とバイヤー向けのオークション「スターバイヤーズオークション」の二本柱で成長してきたSOUのネット・海外戦略について聞いていく。

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【プロフィール】
嵜本晋輔 さきもとしんすけ
1982年、大阪府出身。関西大学第一高校卒業後、Jリーグ「ガンバ大阪」へ入団し3年間在籍した。その後は実業団チームである佐川急便SCに移籍する。現役引退後、父が経営していたリサイクルショップで経営のノウハウを学び、2007年にブランド買取り専門店「なんぼや」を関西にてオープンさせた。2009年には東京進出、2011年株式会社SOUを設立し同社代表取締役に就任。

入口としての買取り・出口としての販売双方の強化

―嵜本社長は「元Jリーガー」という肩書でも話題になっていますね。今の職業とは全く違うわけですが、サッカー選手時代の経験で今に生きていることはありますか。

チームとして戦って機能するということを考えることですね。サッカーって本当にチームプレーで、ひとり飛びぬけた選手がいても、周りの選手と上手く機能しなければ絶対に試合に勝つことが出来ないんですよ。企業経営も同じ。サッカーでは使われる側、選手でしたが(笑)。今は監督・経営者として社員のどの部分を見抜き、どこに役割を与えていくのかというのは意識出来ていると思います。

―なるほど、社員の方それぞれの特性を見ながらうまく配置されているわけですね。ここからチームをさらに大きくしていく中では特に重要になりそうです。この先の成長戦略はどういった内容でしょうか。

大きなものとしてマルチチャンネル化があります。入口としての買取り・出口としての販売双方の強化をマルチチャンネル化と定義しています。これによって最適な買取り先や売り先を商品ごとに見定めたいと考えています。出口も今までB to Bのスターバイヤーズオークションのみだったところを香港でのオークションを開拓する、ヤフオク!を開拓する、その他他社の持つ販路なども開拓することによって、結果的には買い取りの現場にも活きてくるはずなんですよね。

―具体的にはどういった効果が出ているのでしょう。

元々我々は買取りの会社です。リアル店舗「なんぼや」で買い取った商品をスターバイヤーズオークションで同業他社へ販売するのが基本でした。適切な販路を選ぶことで一般消費者にもリーチでき粗利も高くなってきています。そうすると買取も強化出来てくる。

海外進出で成長を

―販路の一つとして香港でのオークションを開拓されたというお話が出ました。海外進出は成長の柱の一つと言うことでしょうか。

そうですね。日本だけを見過ぎると伸びしろに限界がある。やっぱり海外にしっかり視野を広げて、日本式の買い取り販売というビジネスをやらないといけないなと、すごい危機感を持っています。

―そういった中ですが、香港でのオークションの売り上げはどうなっていますか。

良いです。香港でのオークションは3か月に一回ですが、回を重ねるごとに業者数・売り上げ規模ともに上がっていっています。最初40~50社だったのですが、直近では100社を超えました。

―香港での開催当初は香港オークションで売るよりも日本で売った方が高く売れるものもあったそうですが、最近はどうでしょう。

今でもいくつかは日本で売る方が高いものがあるというのは事実です。ですが、最初と比べても海外の方が高く売れるようになってきた。業者数が増えてそれぞれの得意な商品を買える人達が多く集まってきているので、今までちょっと弱いなと分野も含めて良くなってきています。ダイヤで言うと今回は日本からの参加者はほとんど買えていませんでした。

―日本のバイヤーもいらっしゃるんですね。

はい、日本の企業やバイヤーにも来ていただいています。あとはインド・中国のバイヤーが大半を占めています。

―今後は開催頻度を上げていくことになりますか。

商品の売れ方によっては増やしていきたいですね。ただ、業者様も常時香港におられる方ではないので、バイヤーさんの香港に行かれるタイミングというところと合わせながらやらないといけない。現在は香港でのジュエリーショーの開催と合わせてやっているので、頻度を上げるのは難しい部分もあります。

―ではこの先、新たに進出としたらどの辺りを狙っていらっしゃるのでしょうか。

具体的には無いですね。ただやはりアジアが一番有力かなとは思っています。

ネットだけでは成長できない

―海外の話も出ましたが、ブランド品に特化した販売店舗の「アリュー」や訪日外国人をターゲットにした大阪の店舗「ジパング」といった国内の販売店の調子はどうでしょう。

リアル店舗単体の売上としては自分達が想像しているよりかは上手くいってるんですが、リアルの販売店舗とEC販売を繋げる「販売のO to O(オンライントウオフライン)」は上手くいっていないですね。元が「なんぼや」を中心としたリアル店舗での買い取りの会社なので買取りは上手くいくのですが、販売戦略のほうはスピード感がイマイチ上がらない。

―嵜本社長が考えている店舗のO to Oの狙いとは何ですか?

WEBで商品を買おうとした時に、やはり高額な商品なのでEC完結ですぐにっていうのはなかなか難しい部分も少なからずあると思う。実際リアル店舗で手に取って見られる状況を作ることによってECでの売り上げも上がるというのは間違いないと考えています。リアル店舗での経験の蓄積も大事な要素です。

―そう考えると、ネットでの成長はリアルでの成長が欠かせないということですね。

そうですね。ネット事業領域を広げるためにはリアルの買取り店「なんぼや」で買ってきて、オークションで販売するという今のビジネスモデルが必要なんです。買い取り店というリアルでのインフラがないとデータが集まらないので。だから、リアルとの両輪で回していかないとウェブ事業の方も伸びていかない。

―マルチチャンネル化で国内の販売店や海外、ECなど売り先も増えた訳ですが、今後商品の売り分けはどうしていかれるのでしょう。

ヤフオクで言うと低単価な商品、粗利率が高い、アパレルなどB to Bのオークションに出しにくい商品をメインにしています。店舗に並べているのはコンディションが良く海外向けニーズが大きいものも多いです。
オークションでもバイヤーの顔触れが変わるだけで、値段が大きく変わってしまうこともあります。適正な販路を見定めるというのが非常に重要かなと思います。

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