なんぼや、買取の争点は"持ち物"の把握

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なんぼや、買取の争点は"持ち物"の把握

2018年09月09日

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買取の争点は"持ち物"の把握
資産価値の見える化で囲い込み

消費者の持ち物の状況を把握することで、将来的な買取等において優位なポジションを築く。そんな取り組みが活発化してきている。これまでであれば、消費者は企業に査定依頼をして初めてモノの価値が分かるという流れが一般的だった。これを常時価値が分かる状況にすることで、将来顧客を囲い込もうとしている。

ブランド品等の買取専門店「なんぼや」を展開するSOU(東京都港区)が2017年10月にリリースした資産管理アプリ「miney(マイニー)」。これは、ユーザーが所有するバッグ、時計、ジュエリー等のブランド品をアプリに登録すると、その資産価格(概算の査定額)が分かるというもので、過去から価値の変動が分かるのが特徴だ。

登録したアイテムの価値が変動すると、プッシュ通知でユーザーに知らせる。ワンクリックで同社に買取依頼を出すことができる。同社によると、マイニーのダウンロード数は今年5月には1件を超え、登録点数は約10万点に、登録された資産総額は約15.7億円にのぼる。金額ベースでは75.8%を時計が占めている。

現状はまだユーザー の登録を促すフェーズで「アプリの完成度はまだまだ。改良を重ねていきたい」(嵜本晋輔社長)と話すように、同社の買取に貢献できているわけではない。ただ、このアプリへの資産登録額が大きくなっ てきた際には、強力な買取チャネルとして成長を遂げる可能性がある。現状は、ブランド品だけが登録可能だが、今後は骨董品や美術品、車や不動産へと広げていく考えだ。

購入履歴に下取り値

ZOZOUSEDを展開するクラウンジュエル(東京都渋谷区)が2016年11月から始めた「買い替え割」は、同社の商品調達力を飛躍的に高める原動力となっている。これはZOZOTOWNにおいてユーザー が商品を購入する際に、同サイトで過去に購入した商品を下取りに出せば、その金額分が購入できると言うものだ。

購入履歴において商品ごとに下取り値が表示されてり、ユーザーは下取りに出したい商品を選ぶ。選択した下取りアイテムは、購入した商品が届く際に同梱される送付用バ ッグに入れて返送するだけ。下取りした商品はZOZOUSEDで販売される。クラウンジュエルで調達している商品の約5割が下取りサービス経由。同社の取扱高は、2018年3月期で前年比23.9%増の159.5億円と高成長を支えている。

「今後も買い替え割の強化と更には新しい取組みを検討しております」(広報・椿本晶子氏)ブランド委託・買取サイト「リクロ」を展開するアクティブソナー(東京都港区)が、海外ファッション通販サイト「BUYMA」向けにサービスの提供を開始した「ソク割り」もクラウンジュエルの「買い替え割」と考え方は似ている。ただ、同社の場合は「BUYMA」だけでなく、さまざまな企業と提携を結んでおり、れら企業にも同様のこれら企業にも同様のサービスを提供していくことができる。
20差し替え.jpgのサムネイル画像▲ZOZOTOWNでの購入時に利用できる「買い替え割」は、
クラウンジュエルの商品調達力を引き上げている

20-B.png▲リクロがBUYMA向けに提供を開始した下取りサービス「ソク割り」

無意識に決まる売却先

ユーザーが所有しているモノが可視化されれば、後は手放す適切なタイミングを知らせるだけで企業は商品を入手することができる。紹介した企業は、購買履歴を利用する、ユーザい~に持ち物を登録してもらうアプローチで持ち物の価値の見える化を図っている。

前者は、既にあるデータを下取りに活用す ることで即効性がある一方で、把握できる情報の範囲は購入履歴に限定される。それ以外の情報をどう入手していくかが課題となる。一方後者は、データが貯まるまでに時間を要する。

そのため、ユーザーが自ら登録するというハードルを下げ、多くの情報を集められるかがカギを握る。これまではリユース企業は、持ち物を売ろうと考えている顧客を集客し、買取につなげてきた。しかし、それ以前に買取の勝負は決してしまっているという状況が既に起きつつある。消費者は無意識の内にモノの送り先を決めてしまい、他の企業が入り込む余地がなくなってしまうことになりそうだ。

第445号(2018/08/25発行)20面

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