《骨董買取の技法4》日用使いの漆器は高値期待できず

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《骨董買取の技法4》日用使いの漆器は高値期待できず

2015年10月10日

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骨董買取の技法 タイトル

骨董買取の技法 第4回

美術品なら数百万円落札も

ご存知の方も多いと思いますが、「CHINA」という言葉は、欧米では磁器を意味する言葉としても使われ、「JAPAN」という言葉は、漆器を意味する言葉としても使われます。それほど漆器というのは、日本文化の中心をなす工芸品であり、日本人の生活になくてはならない生活道具であったのです。そして、産地も一番有名な「輪島塗」の他、津軽、会津、江戸蒔絵、鎌倉、春慶(飛騨)、京都、讃岐、琉球など全国に多数点在しています。

また、技法にしても、蒔絵、螺鈿、沈金、キンマ、彫漆など様々な手法があります。

飛来一閑作 喰籠(じきろう)飛来一閑作 喰籠(じきろう)

買取りの観点から見てみましょう。古い家などの片づけに行くと、必ずといっていい程、古い木箱に入った漆器があります。1つの箱に腕が10客や、漆器の盆が10枚入っていることが多いです。一般的なこのような腕や盆は、業者の骨董交換会では、1,000~2,000円ぐらいとなります。料亭や旅館などしか使われなくなってしまった足つき盆などは落札されないこともあります。地方の少し大きな家の片づけでいくらでもでてくるからです。また、漆の腕は熱い汁などを入れて使う内に「やけ」(変色のこと) が生じます。それらは、傷物に準じた扱いとなり減価されます。そして、大半の家庭にある食洗器の使用に適しませんし、扱いが面倒なのです。

ご存知の方も多いと思いますが、漆は本来高価で、塗り物を制作するのは大変な手間がかかります。輪島塗の販売サイトなどをみると天然木で造られた汁腕は、最低でも1客2万円はします。(漆塗の場合、安いものは木ではなく樹脂などのプラスチックもあり、中古価値は0。) 古い碗は、1腕100円。新品は、2万円。これほど、中古と新品の値段の差があるものもあまりないですね。ここまでは比較的日用使いされる漆器の話です。

美術品としての漆器はどうでしょうか?まず、茶道具で見ていくと、様々な道具で蒔絵を主とする漆器が使われています。棗(「なつめ」薄茶を入れる漆器) は、お茶を嗜んでいるお宅には必ずあります。前回ふれたように、箱のないものや紙箱のものはほとんど評価できませんが、千家十職の「中村宗哲」や「飛来一閑」(一閑塗の祖)などの作品は、交換会でも数十万円で落札されます。

また、黒田辰秋、松田権六、音丸耕堂などの人間国宝を受賞している作家の作品も大変、高価に取引されます。特に民芸運動の作家としても有名な黒田辰秋の家具などは、オークションなどで、数百万円で落札されるものもあります。また、江戸時代の印籠や文箱、刀の小道具の出来のよい作品、また、近年特に高価に取引されている明治時代の柴田是真、川之辺一朝などは、贋物も多いですが高額なものもあります。買取りの現場で出てきたら見逃さないようにしましょう。最後に触れたいのは、バブル期などに数百万円で販売された、輪島塗の座卓です。一見高価値に見えますが、市場では数万円です。現在の日本では、残念ながら一時に比べ需要が低いのです。

藤生 洋藤生 洋

<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。

377号(2015/10/10発行)3面

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