《皮革製品修復ラボ(31)》安易な値下より手間かけ値上

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《皮革製品修復ラボ(31)》安易な値下より手間かけ値上

2015年10月10日

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皮革製品 修復ラボLesson.31 ブーツをキレイに

価格バリエの広さはお客にとって魅力

ウキウキするね、ブーツの季節です。前回ワークブーツ、とりわけレッドウイングのうんちくを話したが、シーズン的にもタイムリーだし今回はこれらをきれいにして売るハウツーを紹介しようと思う。

中古のブーツは、未使用品ならともかく「いい味が出てる」

――つまり、履き頃な状態だとどうしても下半身リサイクルの ネック、清潔感に不安が残る。気持ち悪さを感じると人は試し履きさえ躊躇う。そのため、「そういうのを気にしないお兄さ ん」にしか売ることができていない店が大半だ。

ブーツは本来老若男女が履きこなせる、ラギッドな格好よさを持つアイテムなので、購買層を広げたいところだ。そこで、抵抗感なく履いてもらえるようにクリーニングしよう。当社がやっていることを、家庭や店舗でもできるようなカタチで紹介する。

除菌済みタグ(イメージ)除菌済みタグ(イメージ)

ステップ① 水溶液をつくり洗う

シューレース(靴ひも) を抜き取る。
洗剤や石鹸を水に溶かして水溶液をつくり、歯ブラシをひたしてコバ(革端、切り口) 回りの汚れをかきだす。
柄つきスポンジやブラシで中を洗う。水溶液は少な目に。中底を濡らし過ぎると乾燥後に縮むので注意。
アッパーは水溶液にタオルを漬け込み軽く絞り、拭きあげる。
アウトソールはたわしでゴシゴシ。汚れが頑固ならクレンザーを使用してもよし。
シューレースを水溶液に浸し手洗いする。
すべて軽くすすいで、真水を絞ったタオルで拭き取る。

ステップ② 成形して乾かす

簡易的なシューキーパーをブーツにきっちり入れて成形する
直射日光が当たらず風通しの良い場所で自然乾燥。サーキュレーターや扇風機で乾燥を促進するとよい。(※理想的なのはオゾン対流乾燥庫で除菌除臭乾燥する方法)

ステップ③ 最終仕上げをする

乾いた後、汚れが落ちていない箇所や黒ずみを砂消しゴムやサンドペーパー(1500~2000番手くらい)で極めて薄く削る。
カラー靴クリームを混ぜて色合わせをし、色の抜けている箇所に少しずつつけてぼかす。水性顔料でも可。シューレースの跡がついたベロも同様に。
デリケートクリームなどで自然な風合いに仕上げる。ミンクオイルでギトギトにするよりおすすめ。消臭剤でできるだけ無臭に近づける。シューレースを元通り戻して完成!

多少汚れは残っていてもいい。要するに、「味はあるが不潔感は無い」状態にすることが大切だ。さらに除菌・除臭・除湿を施していることを左上写真のタグのように表示することも忘れずに。これでお客さんに伝わる。

在庫がたくさんある時、つい値下げに走りがちだが、「汚れているが履きジワが少ないもの」「ソールがさほど減っていないもの」は、少し手間をかければ逆に価格を上げることができる。価格バリエーションの広さは、お客さんにとって魅力だ。

東欧では「ベッドと靴は良いものを買え」。フランスでは「素敵な靴は素敵な所へ連れてってくれる」。イタリアでは「その人が履いている靴はその人格そのもの」などと生活、服飾商品の枠を超えた表現がある。ユーズドだっていい、そんな靴との出会いを客層広く提供してあげて、どんどん試し履きさせてほしいものだ。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

377号(2015/10/10発行)5面

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