《ブランド市場バイヤーに学べ18》目で見て、調べて、描いて覚える

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「ブランド市場バイヤー 齋藤清の俺に学べ!」

《ブランド市場バイヤーに学べ18》目で見て、調べて、描いて覚える

2016年02月25日

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ブランド市場バイヤー 齋藤清の俺に学べ!

第18回 商材や相場の覚え方

20年も古物業界に身を置いていると、この業界に入ったばかりの方や異業種の方から「どうやって商材や相場を覚えたんですか?」と聞かれることがあります。刻々と変わる相場に加えて、現代は膨大な情報が氾濫していますから、人それぞれ様々な覚え方があると思います。今回はあえて、私が昔覚えたやり方についてお話します。

目で見て、調べて、描いて覚える

私がこの業界に飛び込んだ当時は、今のようにインターネットが発達していませんでした。当然、情報の収集源は雑誌やカタログが中心。市場に行くときには「資料」として、それらの切り抜きを持ち歩いていました。下見の際は、資料をバサバサと広げながら商材とにらめっこ。スマホやタブレット片手にスラスラと調べ物をしながら下見ができる現代からすると考えられないかもしれませんが、少し前はそれが当たり前でした。

また、今の市場よりも珍しい品物と遭遇する機会も多かったように思います。特に宝飾系は一品モノが多く、価格はもとより真贋を調べるのも一苦労でした(汗) 手持ちの資料だけでは分からない商材もしばしばあり、ブティックや百貨店に問い合わせることも。どうしても分からないときは、イラストで描きとめておいて、後日調べるなんてこともありました。

こんな風に書くと「昔は手間ばかりかかっていたのか」と思われそうですが、悪いことばかりではありません。雑誌やカタログを切り抜いてメモ書きしたり、時にはイラストまで描いて努めたことで、一つ一つの情報をしっかりと記憶することができました。

時にはイラストを描いて覚えたことも時にはイラストを描いて覚えたことも

自分の体験や行動と合わせて覚えた記憶は「エピソード記憶」と呼ばれますが、まさにこの典型だったのでしょう。実際、こうして覚えた商材や相場の情報は今でも覚えています。情報がすぐに探せる現代でそこまで手間をかける方は少ないかもしれませんが「記憶する」という意味では有効な方法だと思います。

最後に市場の制度が今とは違っていたことにも触れておきます。例えば、昔は市場の「保証」がないのが当たり前でした。

今でこそ落札後に会主が一定期間の保証を設けている市場が多いですが、当時は落札した商材に不備があったり万が一不正品だったとしても、それは買い手の責任だったのです。とてもシビアな反面、買い手の目に宿る真剣味は今以上だったかもしれませんね。その分、真贋や相場を覚えようという意識や緊張感に溢れていたのだと思います。

ちょっと昔語りが多くなりましたが、いかがでしたか。調べればすぐにある程度の情報が分かる現代ですが、大切なのは一時的な記録に留めず「記憶」に落とし込むこと。今回お話したことが、皆さんが商材や相場の覚える際の一助になれば幸いです。

アールケイエンタープライズ 齋藤清齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長

Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。

386号(2016/02/25発行)17面

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