《トップINTER VIEW》ブックオフコーポレーション 井上 徹執行役員 海外事業担当兼R室長、マレーシア出店を加速

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《トップINTER VIEW》ブックオフコーポレーション 井上 徹執行役員 海外事業担当兼R室長、マレーシア出店を加速

2019年07月02日

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要約すると.ブルー.png

・出店のきっかけはマレーシアで買い物をする客の姿
・宗教的問題で豚革がトラブルに
・日本の廃棄コスト削減のために「受け皿」へ

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ブックオフコーポレーション

廃棄コスト削減する「日本の受け皿」に挑戦

bookoff井上 - コピー.jpg▲井上 徹執行役員 海外事業担当兼R室長

ブックオフコーポレーション(神奈川県相模原市)がマレーシアで展開する総合リユース店「ジャラン・ジャラン・ジャパン(以下:JJJ)」が好調だ。5月18日には4号店をオープン、開店前には約400人が列をなしたと言う。現地法人の代表で海外事業担当の井上徹執行役員にこれまでの経緯を聞いた。

毎晩お客さんが一人も来ない夢を見た

--マレーシアに1号店がオープンして2年半になります。改めて出店の経緯を聞かせてください。

井上 元は直営店で発生する廃棄コスト削減というテーマで始まり、2015年9月に準備室を立ち上げました。リスクは負えないので最初は輸出でと考えていたのですが、いくつかの国を回ってマレーシアを見た時に、お客さまが買い物している姿を見て、これは小売りのほうが面白そうだっていうか。日本のBSB(ブックオフスーパーバザー)でお客様が、買い物をすごく楽しんでいる姿がそのままそこにイメージができたんです。でも私自身店舗経験が乏しく、出店したいって話すと社内の多くは「本気か?」って反応でした。

--そんな状況でよく出店できましたね。

井上 KOIKEという現地パートナーが見つかったのは大きかったですね。責任者はチャイニーズ系マレーシア人の方ですけど、日本語もペラペラな方でした。夜中までお酒を酌み交わしながら話をするうちに新規事業への想いを共有することができました。強力なパートナーのおかげで、現地法人を合弁で作って半年で1号店をオープンさせることができました。準備にはKOIKEからも多くのマレーシア人社員がJJJのユニフォームを着てヘルプに入っていただきました。私たちにとってはまさに「一緒に汗をかける」かけがえのないパートナーです。

--マレーシア以外は検討しましたか。

井上 実はタイとかカンボジアに行った時に、タイとカンボジアの国境に東京ドーム5、6個分の中古のマーケットがあっていろんな国から来たあらゆるものが売られてたんですよ。「駄目だ、こりゃ」と思っちゃったんですよね。勝てないというか、埋もれちゃうと。せっかくやるなら、ナンバーワンを狙いたかった。だから、市場性ももちろんですが、売り場面積にはこだわりました。これが結果的に売れ残った商品でも魅力を引き出すことにつながったので良かったと思います。

--4号店も560坪と大型店を次々と出店されています。月商はどれぐらいですか。

井上 月商は、今回4号店を出して4店舗で5000万円規模になりました。商品単価は160円で、客単価は1000〜2000円になりますので客数勝負であり、また毎日大量の商品を売り場に補充しなければならないのでサプライチェーンと人財育成がカギになります。

ただ1号店を出す最初は日本で売れ残った商品がはたして売れるのか?というのは、最後の最後まで全く自信がなかったですね。特に物件のサインをしたその夜からオープンまでの3ヵ月、お客さんが一人も来ない夢を毎晩見ていました。

--現地を見て小売りがいけるって話じゃなかったでしたっけ笑。

井上 実はそこまでは勢いでした(笑)ということにサインした後に気付きました。物件は誰もお客さんが来ないようなゴーストモールですし。マレーシアはモールを建て過ぎちゃっていてどこも同じようなコンセプトでやってるから、勝ち組と負け組がハッキリしているんです。うちの出店は全部負け組の方です。ちなみに2号店はモールの4階なんですけど、その下の階は全部シャッター街になってて。日本だったら100%オッケー出ないところです。

--なぜそんな物件を選んだんですか。

井上 そこは割と戦略的な考え方がありました。1つは、ゴーストモールであれば賃料が安い。今となってはゴーストモールでも集客力があるという評判から出店オファーも多いので、よりよい物件の賃料交渉もしやすくなりましたが、最初は認知ゼロでしたから。あとは他のテナントがいないので、屋外看板を大きく取れる。認知度がない中でこれは大きかったですね。

「豚革」でトラブル全商品を撤去

--マレーシアは多民族国家でイスラム教が主だそうですね。

井上 これは恐らくマレーシア全般ですけど、やっぱりイスラム教に対してのリスペクトは、もう絶対原則です。そこをないがしろにしたら、とてつもないしっぺ返しをくらうと思います。例えば、ラマダン(断食月)期間中はスタッフの目の前で我々はご飯を食べないとか、そういう心配りとか気配りはマストです。礼拝室は全店舗のスタッフルームの中にしっかり置いて、いつでもお祈りできるようにしています。

--宗教的な問題でトラブルとかありましたか。

井上 一番怖かったのが豚革ですね。靴・バッグにはやっぱり豚革が結構使われているんです。最初私は商品知識の無さから割と軽視してまして、大丈夫だろうと軽い気持ちで輸出したわけですが、実は豚革品が多分に含まれていました。マレーシアでは豚革のスニーカーとかは、ちゃんとラッピングされて陳列されてるんです。間違って触っても大丈夫なように。

ところが、うちはそれをやらなかったんですね。全然それに気付かなくて、「なぜか売れないなあ、この靴」っていうのが結構あったわけです。ある日お客さんからクレームが来て、しかもFacebookでバーッと拡散してしまったんです。「こんな靴を裸で置いておいて、うちの子が間違って触ったらどうするんだ」ってことと、もう一つ、「お前らのスタッフ、マレーだぞ。こんな靴を触らせてるのか」と。さすがにまずいと急遽店を閉じて、全部チェックして、豚革が使用されている靴・バッグは全部廃棄しました。

--マレーシアで販売している商品は、基本的にはブックオフで廃棄に回る商品を販売されているそうですが、どれぐらい受け入れられていますか。

井上 吸収率でいったら、まだ半分ぐらいです。ですからまだ倍の出店余地があります。私たちのミッションは、マレーシア事業そのものではなく、あくまで「日本側の廃棄コスト削減」なんです。私たちは「3次流通」と呼んでますが。その中で最優先はチェーンの受け皿になることですが、将来的には「日本の受け皿」というテーマにもチャレンジしたいです。

今、全国的に廃棄コストが高騰していて、そのニーズは高まっていると認識しています。排出事業者様・輸出事業者様にとって、ブックオフに対する与信上の信頼と現地でのJJJの販売力が安心要素になり、当方が買い受けることで廃棄コスト抑制と、コンプライアンスとトレーサビリティを担保できるのではないかと思います。そのステージが3年後ぐらいと考えてます。そうなるとJJJは必然的に10店舗以上、また他国展開も、ということになると思ってます。

 


●会社データ
マレーシア現地法人
会社名: BOK MARKETING SDN.BHD.
設 立: 2016年4月
資本金: RM3,800,000(マレーシアリンギッド)
代 表: 井上 徹(Managing Director)

第466号(2019/06/25発行)9面

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