《トップINTER VIEW》Casie 藤本 翔社長、絵画の定額制レンタルサービス

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《トップINTER VIEW》Casie 藤本 翔社長、絵画の定額制レンタルサービス

2019年09月19日

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アートとの出会いの場を提供したい

藤本翔.jpeg▲Casie 藤本 翔社長

絵画の定額制レンタルサービスを開始し、注目を集めているのがCasie(大阪府大阪市)だ。月額1,980円から利用できる。今年1月にローンチしたばかりだが、既に有料利用者は数千にのぼると言う。藤本翔社長に立ち上げの経緯や利用ニーズ等を聞いた。

--絵画の定額レンタルサービスを手掛けて既に数千人の利用者がいるそうですね。どんな方が利用されていますか。

藤本 ユーザー属性で言うと個人7割、法人3割です。法人で一番多いのはやはりオフィスです。あとは、ホテルやメディカル系などになります。

--個人の方は。

藤本 一人暮らしの女子大生もいれば、ネットの使い方がわからないけど借りたいと言うおばあちゃんもいる。でも、中央値を取ると40代女性です。子育てが落ち着いて、インテリアとかを子供中心から、私中心の城づくりを始めるんです。

--絵画を買うのハードルが高そうですね。

藤本 分からないことだらけ過ぎて、絵の購入って意思決定ができないんです。でも、僕らの場合は、「あれも、これも、どれもいいなら、毎月交換して全部試してみればいい」それがサブスクリプションならではの良さと思います。

--診断サービスというのがありますが、決められない方が多いためですか。

藤本 そうです。作品指定をされるのは、実は3割ぐらい。7割の方々は、抽象的なオーダーが多いです。ですので気に入っていただける精度を上げるために、ユーザーパーソナライズをめちゃくちゃ強化しています。

画家の共感を得た想いとは?

--絵画の取扱いの知識がない中から事業を始められたそうですね。

藤本 そうなんです。2017年の8月1日から、「おし!とりあえず画家に会いに行こう」みたいな感じで。僕ら創業メンバー全員画家の知り合いゼロだったし、アートのキャリアは何もなかったので。画家さんにサービスの説明をする行脚の旅が始まりました。

――それで絵って預けてくれますか。

藤本 やっぱり、どこの馬の骨かわからない、アートのことも知らない若者に作品を預ける方はなかなか現れなくて。1,000点集めるのに1年かかりました。

--どうやって理解を得たのですか。

藤本 画家さんが「まず、預けるには倉庫を見させてくれ」と。でもド素人が始めたのにそんなの見せられるわけないじゃないですか。それで、絵画販売とか、額縁の会社さんに聞きに行って、棚作りとかを教えてもらいました。作品がガラガラの状態で画家さんを招いたときに、「なんでこんなことをやろうと思ったんですか?芸大出身でもないあなたたちが?」と聞かれたんです。

--そりゃそう思いますよね。

藤本 実はその想いは結構強くあります。うちの親父が元画家で、売れない画家を長いこと続けていました。自分の描きたい絵で生計を立てることがすごく難しくて、受託の仕事をかなりやっていました。我慢して仕事を続け、無理をしすぎて病気になってしまい、35歳の若さで親父は病気で死にました。当時、画家仲間が親父には結構いたんですが、結婚したり、子どもが生まれると生計を立てられないため、みんなサラリーマンになって、お勤めに行くんです。「才能があるのにもったいなさすぎる」って親父は言っていたんです。

--絵画だけで生計を立てられるのはごく僅かでしょうね。

藤本 そうです。調べたら職業芸術家が50万人いて、この中で生計立てられているのって5%とか、3%とか。
「うちの親父みたいな人がいっぱいいてるんやろうな」と。これは日本が世界に比べてアート文化が低いからだと思うのです。でも、年間の美術館の来場延べ人数だと、プロ野球全球団の全試合の入場者数よりも多い。そう考えると、出会う場がなかったんじゃないか、何かつくれないかなというのを、実は中学生ぐらいで考えていました。その話を画家さんに話したら、「わかりました。預けます」って言ってくれたんです。それで、アーティストさん専用のウェブサイトをつくったときに、なぜこれをやろうと思ったかをちゃんと書いたんです。そこに画家さんが共感してくれて一気に増えました。本当に助けられました。

--レンタル報酬の一部は画家に回るんですよね。

藤本 レンタル売上の35%は画家さんに入る仕組みです。最初画家さんは、報酬を目的として僕らに作品を預けていると思っていたんだけど、それ以上に大事なことが実はあって、それは自分の作品が飾っていただいた方にどう評価されるのかというフィードバックなんです。やはり画家さんって、親父もそうだったんですけど、自分の描いた絵を見せる場がないんです。描きあげただけではただの作品とか絵に過ぎない。人に見られることで初めてアートに変身すると僕は思っていて、いろいろな評価をされて、その評価を基に自分のかたちをつくっていくんです。

出品審査通過率は20〜30%

--今の取扱い作品数は?

藤本 6,500ぐらい、アーティストさんの数は350~400名いらっしゃいます。

--作品を預けている方はどんな方ですか。

藤本 画家さんは、ネットを通して自分で審査用の作品を送るので、やはり20代から30代が一番多い。親御さんの承認をもらった10代の子たちもいます。最高年齢は96歳の京都のおじいちゃんで富士山の絵ばかり描く人です。

--作品審査で通る確率は。

藤本 20〜30%ぐらいです。大体毎日1日に20人ぐらい応募が来るんです。ホームページとかSNSで過去の個展のキャリアとか見させてもらって。3人の審査員が多数決方式で審査しています。

--この先はどんな展開を考えていますか。

藤本 作品の新しい購入体験を届けたいと思います。ただ、僕らは絵の購入体験で損をして欲しくない。そのためには相場をしっかりつくる必要があって、Casieが販売する作品は画廊と同じように買取保証をつけるようにしたいです。

--買取保証が付くと安心して買えますね。

藤本 「部屋で飾っている作品ちょっと安くなってるなあ。なんでやろ?」と調べると、アーティストのレンタル実績が下がっているとか。逆にアーティストのフォロワーが伸びていたり、作品のレンタル回数や販売実績が増えていたら作品の評価額が上がるという制度をつくりたいんです。

--面白いですね。

藤本 そういう面白味があれば、画家さんを応援すると思います。自分が持っている作品の価値を上げたいと思うじゃないですか。そうなると、画家さんが「個展やります」とかSNSで言っていたら、シェアしようという応援活動が自然に広がると思っていて、新しいアートの購入体験を提供していきたいと考えています。


●会社データ
会 社 名:株式会社Casie
設 立:2017年3月30日
資 本 金:4,500万円
本社所在地:〒536-0002 大阪府大阪市城東区今福東2-6-19

●社長プロフィール
1983年生まれ。亡き父が生涯画家を貫いたが作品発表の機会を満足に得ることができず苦労した姿を幼少期に見て育つ。才能ある画家が経済的理由で創作活動を断念する現在のアート業界に課題を感じ、新しいアートのエコシステムを発案。2017年株式会社Casieを創業し代表取締役に就任。

第471号(2019/09/10発行)11面

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