トライシクル、老舗金属スクラップのリユース子会社

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トライシクル、老舗金属スクラップのリユース子会社

2020年02月19日

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企業排出の不要品、千葉2万坪敷地で再生

福田隆 CEOトライシクル 福田隆CEO

創業約120年で金属スクラップを行う「東港金属」その子会社としてリユースを推進すべく産声を上げたのが『トライシクル(東京都品川区)』だ。昨年立ち上げた企業間フリマサービスの実績は伸び悩むものの、企業への訪問回収でオフィス什器や業務用機械などを月間1000点調達している。今後は、千葉にある2万坪強のヤードを拠点に攻勢をかける。

シェアエコ登場で存在意義脅かされる

--母体である東港金属は、創業約120年にもなる金属スクラップの会社です。

福田 2002年、自分が28歳の時に東港金属の4代目社長に就任しました。それまで会社は金属のほうばっかりで、産廃処理もやってはいたんですが全然伸ばせていなくて。僕が産廃に力を入れてから、10億円程度だった年商を70億円程度までに伸ばしました。当社の年間の取扱量は、潰す前の状態で約13万トン。うち金属再生をするのが8万トンぐらいです。

--リユース部門となる子会社トライシクルを発足したきっかけは。

福田 大きいのはメルカリさんなどシェアリングエコノミーが出てきたことです。それによって社会の流れが変わり、自分たちの存在意義って薄くなっていくなと思ったんです。

--どういうことですか。

福田 僕らスクラップや廃棄物の事業者って、ある意味心地良かったんです。この業界は現金商売で資金繰りはいいし、物は腐らない。在庫リスクとかもあんまり考える必要がない。BtoBのリサイクルという隠れた業界でもあるので、表に出なくていいんですよね。しかしインターネットの普及で、それまで限られた人にしか触れられなかった情報などに、みんなアクセスできるようになりました。例えば、鉄スクラップの市況をつくっているのは、日本だと「東京製鐵」さん。そこの宇都宮工場が発表している価格があり、それをベースに仕入れ値が決まるんですが、そこから配信されるものを見るなどして情報格差でビジネスしようという感じでした。それだけでは今は通用しなくなり、やっぱりちゃんと面白いことを考えてやらなきゃだめだと思ったんです。また、今毎年3000万トンぐらい鉄スクラップが出ているんですが、うち900万トンが輸出されている状況です。日本のメーカーユーザーがどんどん減り、原料の金属が日本でもう使いきれなくなっているわけです。

--廃棄に回す量を減らすべく、だからリユースなんですね。

福田 そうですね。今もですが、企業から引き上げたオフィス什器とか、もったいないなと思いながらもバンバン粉々にしていました。ほかにも、倉庫で使うようなリーチフォークとか、まだもう少し動くのになという物もありますね。

企業間フリマまだまだ
訪問回収で在庫増やす

--そんななか昨年1月、企業間フリマサービス「ReSACO(リサコ)」を出しました。

福田 リサコを使ってもらって企業間で売り買いしてほしいなと思ったんです。ただ、CtoCと異なり企業間は難しいですね。現状リサコを通してダイレクトにBtoBマッチングできている実績もまだまだ乏しいです。つまりは出品するのが手間。まず企業は、不要品が目の前から消えてなくなればいいわけじゃないですか。こんなの別に電話1本で売れるからいいよ、みたいになるわけです。一方で、中古品があったら欲しいという企業はたくさんいます。特に今、建設機械とかリビルド品の需要ってすごく高い。処分したい側と、欲している側のモチベーションの差がとにかくすごいので、これを解消しないといけません。

--それを受け、御社では企業から不要品を回収するサービスを展開しています。

福田 ウェブ広告やチラシを撒くなどして、関東1都3県の企業を対象にアプローチしています。毎月1000点程度の不要品を回収できています。それらを、昨年に千葉・富津に開設した2万3000坪のヤードで検品・管理し、リユースなどに回せるよう準備しています。このヤードの機能はリユースだけではありません。リメイクやアップサイクルなど付加価値を上げて販売することや、部品取り、海外輸出なども行っていきます。現在ヤードには建屋が1棟あるだけですが、6月には建屋をプラス3棟完成させる予定です。

--そこで集約した商品を、どう再販していくのでしょう。

福田 多少ですが今、当社が売り手となってリサコに出品している物があります。自社のサービス上で売れれば利益的には良いのですが、今後は細かく販路を分けていきます。

最後の砦は車も飲込む大型シュレッダー

--オフィス什器や業務用機械で言うと、先行のリユース会社がいます。東港金属傘下のトライシクルだからこその強みは。

福田 スクラップ事業をやっている僕らには、大型のシュレッダーで破砕できる設備があるんですよ。それも、車を丸々入れられるような。これがあるかないかで、圧倒的な力の差が出てくると思っています。何を言いたいかと言うと、例えばこれ再販できるのかな?とか、こんなの本当に再利用できるかな?というものを仕入れるとします。仕入れてからギリギリまで時間をかけて、最悪売れなかったとしても、当社の大型シュレッダーにかけられます。すると金属が取れるので、まあまあコストとしてそこまで見なくていい。他社さんだったら、不良在庫になった時点で捨てなきゃいけない。そのときのコストとかも見なきゃいけないですよね。なので、僕らはドンドン商品を取っていけます。富津の2万3000坪あるヤードのように、設備投資ができるのも、スクラップ事業である程度の安定的売上や収益があるからです。

--フリマとしてのリサコは今後どうなるのでしょう。

福田 とにかく出品ボリュームを上げていかないとフリマも成り立たないですから。これはもう中古車とかと同じで、今でこそネット査定がありますが、最初はそんなものはなく、リアルの中古車屋さんがたくさんあってマーケットが大きくなりました。僕らは先にネット型のリサコを作っちゃったので順番逆だったなと思うところもあるんですが、今やっている回収サービスのようにリアルの動きを活発化させることで、マーケットを大きくしていきたいです。

--現状の課題感や目標を教えてください。

福田 これまでも相当失敗しているんですが...やはり、投資しないと進まないので忍耐を持ってやっていきます。それと何より、リサコをはじめ当社リユース事業もそうですし、世の中のBtoBリユースマッチングそのものを認知してもらうことです。まずは今年中に月間の回収件数を1万件までに上げ、回収数も3万点まで伸ばしていきます。


会社概要
社 名  トライシクル株式会社
設 立  2018年5月22日
資本金  1000万円
本 社  東京都品川区南大井6-17-17FINEビル4階
事 業  概要企業間でのリユース、リサイクル、廃棄までの取引を行うプラットフォームサービスを提供
代表取締役 福田隆

CEOプロフィール
福田隆(ふくだ・たかし)。東京都出身。1996年成城大学経営学部卒業後、ミネベアに入社。その後外資系コンピュータ企業のEMCジャパン(現DELL-EMC)に勤務するも、家業を継ぐため2002年に東港金属入社。先代社長の急逝に伴い、半年後に社長就任。売上高を大きく伸ばす。2018年にトライシクルを設立しCEOに就任。2019年2月にサーキュラーエコノミー対応プラットフォーム「ReSACO(リサコ)」をリリースする。

第481号(2020/2/10発行)9面

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