たんす屋、新日国台湾にて着物リメイク教室初開催

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たんす屋、新日国台湾にて着物リメイク教室初開催

2020年03月08日

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着物リサイクル春夏秋冬
第234回 台湾の着物リメイク講習会

中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」中村 健一 社長
東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長

1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。

親日国台湾で初の試み
ハンドメイドCtoC人気で着物の二次活用に光

1月12日から二泊三日で、久しぶりに台湾に出張した。昨年来、たんす屋の着物リメイクの佐藤初美先生から、台湾の台北と高雄で、着物リメイク講習会が開催されるので是非同行して欲しいとのリクエストがあったためだ。

台湾に初めて行ったのはもう40年以上前になる。当時の台湾では40代後半以上の方々のほとんどがネイティブな日本語を喋ることが出来た時代だった。その後、帯地の刺繍加工の仕事で30数年前に何回か訪問し、最近では台北の「太平洋そごう百貨店」の催事に参加させて頂き2、3度訪問した。中国大陸には、100回以上出張した事と比較すると、台湾とのご縁は浅いと思う。しかしながら、台湾はいつ来ても親日感溢れる素晴らしい隣国だ。この感覚は、中国大陸や朝鮮半島と比較して歴然としたものがある。

総統選に沸く台湾
親日感は着物需要にも

親日感でいえば、今回の訪台が偶然にも、4年に一度の台湾総統選挙の翌日であり、民進党の蔡英文氏が圧勝したことも少なからず影響していた様に思える。

蔡英文総統は、長引く景気の低迷で支持率を下げていた。そこに最大野党・国民党の韓国瑜氏が、中国との関係改善で経済最優先を訴えて勢いづいていたのだが、昨年の香港の民主化デモで一気に体勢が変わった。結果的に、台湾にも一国二制度の導入を求める習近平氏のオウンゴール的な結果に終わった。テレビでは、連日蔡英文氏圧勝の分析が盛んだった。

そんな中の訪問だったが、私自身は、過去に台北の太平洋そごう百貨店でリユース着物販売を経験してきたので、台湾の着物需要の内容はある程度理解しているつもりだ。

台湾で一番の着物需要は、「新舞踊」ではないだろうか。無論正式な日本舞踊を習っておられる方々もおられるが、圧倒的に人数が多いのは、カラオケで日本の演歌にあわせて着物で歌って踊る新舞踊だ。これらのお客様には、当然ながら派手な着物、中でも振袖が大人気だ。

次は茶道を習っておられる方々で、多くはないが正式な着物や帯をお買い求めになる。そして亜熱帯の台湾では、浴衣は大人気だ。

さて、台湾の方々はいとも気軽に訪日して来られる。2019年の台湾からの訪日人数は489万人で、中国、韓国に次いで3位だった。しかし今年は、激減している韓国を抜かして2位になる事は確実視されている。人口2378万人の台湾から年間約2割以上の人が訪日しており、逆に言えば人口1億2644万人の日本から年間2600万人の日本人が訪台することに匹敵する。しかし実際には約200万人程度しか訪台していないのでこの格差は歴然としている。

初開催の着物リメイク教室

今回の台湾での受け入れ先は、台北に本社のある会社で、主にミシンやテキスタイル、副資材の商社だった。顧客は、洋服や小物のリメイクやリフォーム教室の先生方がメインで、先生や生徒さんたちに、ミシンや服地、副資材を卸しており、台湾全土に顧客を持っておられるようだ。

着物素材のリメイク教室は初の開催で、二十数名の教室の先生方が関心を持って熱心に参加された。

私は講習会の冒頭に、着物リメイク素材の提供会社、たんす屋の社長として、着物の歴史や種類に関して簡単な講義を、拙いながら中国語でさせて頂いた。

皆さん着物に大変興味を持っておられ、佐藤初美先生の指導のもと、型紙を使ってのリメイクに熱心に取り組んでおられた。日本国内でもこのような教室は盛んだが、それほどの広がりがなかった。

講義を行う中村社長講義を行う中村社長

海外でも急成長するハンドメイドCtoC

しかし、この講習会を主催している会社の社長、デイビッド・ウ(呉)氏の話をお聞きして非常に驚いた。

今、台湾でも日本でも、ハンドメイド、ハンドクラフト作品のCtoCサイトが急激に成長しているそうだ。Minne(ミンネ)、Creema(クリーマ)は日本国内で大人気のサイトで、Pinkoi(ピンコイ)は台湾に本社を置くアジア最大級のCtoC海外通販サイトだそうである。

これまで私は、この様なリメイク教室の発展を阻害していた最大の理由は、先生方や生徒さんたちが作った作品の行き先が無かった事にあると思っていた。最初の頃は自分が作った作品を家族や友達にあげて大いに喜んでもらい満足するわけだが、差し上げるだけではすぐに行き詰まってしまう。かといって急に、次からは買って欲しいとは言えず、その先が無かったのだ。

しかし、この様なハンドメイド作品のCtoC通販サイトがワールドワイドに発展すれば、自分の作品をどんどんお金に変えることが可能になっていく。

今後、これらの通販サイトが発展すれば、オリジナルの素材を使ったリメイクやリフォームは大人気となるのではないか。その時に、たんすに眠る無尽蔵の着物や帯が「素材」として大活躍する舞台が新たに創造されるのでは、との予感を感じて帰国の途についたが、いかがだろうか。

第482号(2020/2/25発行)18面

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