《ブランド市場バイヤーに学べ36》声の張り方やタイミング、一本狙いがコツ

検索

「ブランド市場バイヤー齋藤清の俺に学べ!!」

《ブランド市場バイヤーに学べ36》声の張り方やタイミング、一本狙いがコツ

2017年09月07日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

《ブランド市場バイヤーに学べ》タイトルバナー

第36回 市場バイヤーの「うまい買い方」

市場で競りに参加していると、「うまい」と思わせる買い方をするバイヤーさんに出会うことがあります。それは、相場を的確に読んでいることはもちろんですが、値段を差すときの"声の張り方"や"タイミング"といった、テクニックに左右される要素だと思っています。今回は、市場でのうまい買い方についてお話します。

「一本ヤリで損して得とれ」とは、以前のコラムでお話した内容です。スパッと一本ヤリを突いて他のバイヤーさんの追従を振り切る方が、競り合いによる値段の吊り上げリスクがなく、結果的に得をするケースが多いということを以前にお伝えしました。さらに補足しますと、特にオーソドックスなモデルはなるべく一本ヤリで買ってしまう方がおすすめ。腕時計でいえば、ロレックスやオメガの定番系や、カルティエのパシャC、ブルガリのB.ZERO1といったモデルなどです。これらは一定以上の人気があり、相場が大きく上下することが少ないので、一本ヤリでスパっと買ってしまいましょう(でないと、先述のとおり競り上がりでかえって相場以上の値段で買うハメになることもあります)。逆にいえば、競り上がってでも狙うのは、基本的には逸品系のものに絞っていきましょう。

また、発句の始まり値が、自分が想定していた値段よりも低かったとしても、基本的には一本を狙っていく方が良いと思います。仮に20万円の相場を想定していた商品が、10万円の発句から始まったとしましょう。ここで11万円の値段を差して運良く買えれば御の字。ですが、競り上がりになって想定予算をオーバーしてしまっては元も子もありません。一本ヤリは、他のバイヤーの戦意を喪失させるためのアピールでもありますから、本当に欲しい商品のときこそ強気で突きたいものです。(ただし、想定した相場とあまりにかけ離れている場合は、商品の欠陥など情報の見落としがないか、用心することも必要です)

余談となりますが、ちょっと前まで競りといえば一本ヤリが多く、競り上がりはどちらかといえばさほど見られませんでした。いま競り上がりが当たり前になってきているのは、同業者が増えて競争が激しくなっていることに加えて、商品単価が上昇して利幅が以前より少なくなってきていることが背景にあるからです。利幅のない商品を、少しでも安く買って利益を残そうと皆意識を尖らせているからだと思っています。

最後にもうひとつ余談ですが、市場でうまく買うためには「座席」も大切な要素です。同じ商品に対して同じ値段を差した人が複数人いた場合、前の席に座っている人に軍配が上がりがちなため、やや値段を上乗せしないと競り勝てないことがあります。さらには、同じタイミングで声を出したのに"後から声を出した"と、あまり良く思われないこともあるので、とりわけ注意が必要です。前の座席に着くためには、市場に何度も参加して、少しずつ買いの実績を積み重ねていくほかありません。一本ヤリの思い切りの良さと、周りを見渡しながら上手に立ち回る細やかさ。なかなかバランスが難しいですが、うまい買い方をされるバイヤーさんは、皆さんこうしたテクニックを持ってらっしゃると思います。

《ブランド市場バイヤーに学べ》齋藤清齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長

Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。

422号(2017/08/25発行)17面

Page top
閉じる