《着物リサイクル春夏秋冬》第218回 中村屋を立上げよう

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《着物リサイクル春夏秋冬》第218回 中村屋を立上げよう

2018年11月08日

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中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」。

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東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長

1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。



神田明神&高島屋のオファーで具体化

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▲12月にオープンする文化交流館

次の20年は「日本文化発信・体験型着物屋」

たんす屋は、来年20歳(ハタチ)を迎える。たんす屋のハタチを迎えるにあたり次の20年間通用する様なり・ブランディングが必要不可欠なものではないかと痛感している。ご家庭の箪笥の中に眠っている膨大な量の着物や帯を買い取らせて頂き、それらを丸洗い、殺菌、抗菌、消臭、プレス加工した後検針して店舗に並べ、リーズナブルな価格で販売させて頂く。基本、このビジネスモデルで20年間やってきた。


よくぞここまでやってこられたと言う思いと、次の20年間通用するビジネスモデルを開発しない限り、未来は無いと言う思いが交錯する中で、あれこれと模索してきた。それが、同時に頂戴した二つのオファーにより、私の頭の中で急速に具体化しつつある。一つ目は、2030年に「銀座1300年」の節目を迎える江戸総鎮守・神田明神からのお話である。弊社の本店所在地の日本橋人形町も数ある神田明神の氏子町内の一つだ。


私はかねがね「日本文化発信型着物屋」を目指してきたが、中でも神社仏閣こそが日本文化発信の最大にして最強のインフラだと感じていた。その中でも東京を代表する神社からのお話に感動を覚えた。



神社で着物と日本文化を体験

神田明神は、本年12月に「伝統と革新」をコンセプトに「神田明神文化交流館」のオープンを目指している。「神田明神文化交流館」は、地上4階地下1階延べ床面積約1150坪の建屋で、地下1階が外国人観光客と日本人を対象にした日本文化体験スペースになっている。具体的には、100名規模のステージと食体験と着物体験を想定したスペースが計画されている。


そして、そこの「着物スペース(仮称)」への出店の打診を受けたのである。私の頭の中で「J-culture体験型着物ステーションbyたんす屋」と言う名前が浮かんだ。このショップのコンセプトは、着物を通しての日本文化体験である。具体的には着物レンタルと、リユース着物及び新品仕立て上り着物、和装小物、和雑貨の販売をベースに、下記の様な体験を提供したいと考えている。


①茶道の実演と体験②花道の実演と体験③ミニ畳作りのワークショップ④週替わりの日本の伝統工芸の職人さんによる実演販売。このショップは、東京山喜が運営主体で考えているが、私がチームリーダーを務めている、チームJ-culture2020のメンバーにご協力頂くことを想定しつつ練っている。


このショップ名「J-culture体験型着物ステーションbyたんす屋」を社員に打診してみたところ、即座に長すぎて話にならないとダメ出しを受けた。そこで短くしようと思っていたら、「中村屋」がパッと浮かんだのである。今、ちょうど歌舞伎座で「中村勘三郎七回忌追悼公演」をやっている最中だが、私の名字中村は屋号にする となんとなく日本文化を象徴する様なイメージを醸し出している。



上海高島屋の催事に参加

この「中村屋」を思いついた時に、呉服問屋時代から長年高島屋の取引でお世話になっている重鎮から、上海高島屋に一緒に行かないか、と言うオファーを受けた。オファーの内容を詳しくお伺いすると、上海高島屋で着物と日本の工芸品の催事を計画してみたいそして当たりが良ければ上海高島屋の中で着物や日本の工芸品の常備店舗を将来的に検討してみたいと言う話であった。


私は、中国での着物ブームをある程度認知していたので、今回、神田明神文化交流館での「中村屋」構想をお話したところ、非常に好感触を持って頂いた。その結果として、11月上旬には高島屋の方と私、それに「日本の職人展」を全国の百貨店で展開されている相澤企画の副社長・山嵜氏と訪中することになったのである。


日本文化が最高の経営資源

たんす屋ハタチのリ・ブランディングを考える中で、日本文化発信型着物屋を目指し、更に日本文化体験型着物屋が視野に入ってきた。これからの日本にとって、日本文化こそが最高の経営資源になると思っている。明治維新以降、日本は欧米諸国に追いつき追い越 すためにひたすら文明化に突き進んできた。これからも、AIやIoT、ロボットなどの開発が進み、ますます文明化が進捗すること に疑いの余地は無いように思う。


しかしながら、文明化が進めば進むほど、それにまさる大切なものがあることに、人は気付くのではないだろうか。つまり文明化することの上位価値に文化がくる、その様な時代がまさにそこまでやって来ているのではないだろうか。今回、10月5日から7日まで日本橋室町野村ビルYUITOにて開催された「きものサローネin日本橋」で、我々チームJ-culture2020は映画「日日是好日」のプロモーションを通して日本文化の魅力発信に挑戦した。「中村屋」が日本文化と着物文化の魅力発信拠点の一つとして次の20年をリードしてくれることを願っているが、いかがだろうか。

第450号(2018/10/25発行)18面

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