《着物リサイクル春夏秋冬》第228回 浴衣戦線異常あり‼

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《着物リサイクル春夏秋冬》第228回 浴衣戦線異常あり‼

2019年09月08日

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中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」。
         たんす屋.jpg           ▲東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長

1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。

※たんす屋Facebookはこちら

天気、CM、花火大会など原因様々
浴衣不振にリアル店舗型EC販売

夏に強いたんす屋を目指して浴衣のショップ展開をスタートしたのが2012年からであるから、今年で8年目になる。毎年右肩上がりを続けており、全社的にもビッグイベントになっている。

その間に浴衣市場は緩やかに右肩下がりを続け、約150億円が約120億円程度まで落ちてきた。その結果5億円近くまで育ってきたたんす屋の浴衣は、浴衣市場ではトップクラスのシェアになってきた。

浴衣に関しては圧倒的に新品優位で、金額ベースでは新品が96%、リユースが4%である。今シーズンもしっかりと数字を伸ばす計画でシーズンを迎えたが、まさかの異常なスタートとなった。

私は常々社員に「天気を売上不振の理由にあげるな!」と言ってきた。「天気は神様の領域で、ここに文句を言うことは神様に文句を言っているのと同じだ!」と言ってきた。しかし、今年関東の梅雨明けは7月29日と昨年と比べて30日も遅かった。結果的に梅雨明けまでの浴衣販売は非常に低迷した。だが、当然天候が売上不振の主原因とは思わない。私なりに分析すると複数の原因が見えてきた。

メディアで浴衣露出激減

一つ目が、テレビで浴衣のCMがまったく無くなったことである。例年6月半ばから、丸井の浴衣を始めイトーヨーカドーやイオンが、競う様にガンガンとテレビCMを打ち、大いに浴衣商戦を盛り上げてくれていた。

しかし今年は、昨シーズンの浴衣販売の不振が原因なのか、浴衣のテレビCMが全て無くなってしまい、更にテレビのバラエティー番組などでMCが浴衣で出演する機会やテレビCMでの浴衣姿もめっきり少なくなった様に感じた。そして毎年女性向け情報雑誌から浴衣の掲載依頼が複数あったが、なぜか今年はゼロであった。つまりは、メディアで浴衣の露出が激減した。

極め付けは最大の浴衣着用機会である花火大会の変化だ。全国で17会場の花火大会が開催を中止したのである。様々な理由があって一概には言えないが、多くの場合が警備費用の高騰で開催を断念したということだ。年々主催者サイドに警察からより厳重な警備体制を求められる様である。更に人手不足で、警備コストも高騰して結果的に警備費用を含む経費増加から17会場もの花火大会が開催中止に追い込まれてしまった。

仮に一会場平均10万人が花火大会を観賞すると仮定すれば、17会場で170万人、その5%が花火大会の為に浴衣を段取りするとすれば、8万5,000セットの浴衣需要が消滅してしまう事になる。これらの複数の原因が絡み合って浴衣市場に大きな影響を与えたことが想像されるが、逆にこの環境で大幅に販売金額を増やしているショップがある。

ゾゾタウン店は2年目も好調

18p-あ.jpgゾゾタウンに出店している「Tokyo135°」のサイト

それが、たんす屋の若者向けのレーベル「Tokyo135°」が出店しているゾゾタウンである。昨年6月に初出店して今年で2年目だが、6月の受注金額は前年比448%だった。7月も1,826万円を受注して前年比305%で、8月に入ってもこの勢いは止まらない。

ゾゾタウンが好調の要因は、若い女性担当者が自ら創意工夫を凝らし、商品の選定は言うに及ばず、写真の撮り方やモデルの選定などなど細やかな気配りができている事が大きいと思うが、何よりも大きな時代の潮流を感じざるを得ない。逆に渋谷109に代表されるいわゆるギャルビルの物販が、相対的にアゲインストの風を受けているように思う。

浴衣の購入者の約80%がF1と呼ばれる若い女性である。彼女達の消費動向が急激に変化しているようだ。彼女たちは一日中スマホを操作している。結果的にスマホに関する支払いが嵩んでおしゃれへの支出が減少傾向にあり、更にゾゾタウンに代表されるネットでの購入やメルカリのようなCtoCの利用が増加傾向にあることはあきらかだろう。

リアル店舗の強み活かすEC

この現状を目の当たりにして、来シーズンの浴衣戦略を大きく転換させようと決意しました。「時代の変化を成長のエンジンにする」が弊社の基本的コンセプトであるので、当然のことだ。

そこで早速自社サイトの立上げを決めた。それも本部内ではなく、都内の直営店を従来の「リユース着物たんす屋」から、「たんす屋.com(http://たんす屋.com)」に店名を変える。この店舗ではリユース商材とリノベ商材、更には浴衣を含む新品二次製品を自社サイトに上げることを主業務にしていく考えである。更に楽天にも出店の段取りを進めている。

リアル店舗でECサイトを立ち上げるメリットは、ECサイトに上げた商材の販売機会を失うリスクがないことである。一歩進んで言えばリアル店舗がある強みを活かしたネット販売の確立だ。来シーズンの浴衣は、ゾゾタウンと自社サイトと楽天ショップで1億円を売り上げ、同時にリアル店舗にシナジー効果を発揮できる仕組みを考えているが、いかがだろうか。

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第470号(2019/08/25発行)18面

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