《皮革製品修復ラボ(25)》ユーザー層広い、質実剛健な実用靴

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《皮革製品修復ラボ(25)》ユーザー層広い、質実剛健な実用靴

2015年01月10日

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皮革製品 修復ラボLesson.25 中古の靴は売れる

トリッカーズから着手してみよう

これからリサイクルショップが売り始めるなら、どんな革靴がいいだろうか。質問を受けたので、今号ではこれについて紹介したいと思う。

この連載で、中古の革靴が売り方次第でいかに売れるか度々紹介してきた。夏に掲載した「ビルケンシュトックを売ってみよう」で、買取り販売にトライしてみたリサイクルショップの方は、手応えをつかんでくれているのではないだろうか。

「さぁ、着手するぞ」という気持ちになった店向けにおすすめブランドをお伝えしよう。ひとつは「トリッカーズ」だ。ユーザーが幅広く、20代の若者から60代の紳士までファンが存在する。価格も6万円前後からで、革靴デビューにも最適だからだ。

この靴は、決して伊達男が履く靴ではない。タフで限りなくベーシック。質実剛健な実用靴だ。あのチャールズ皇太子も愛用している。中でも売れているのはカントリーラインだ。ボリューム感があるので、まさに今。秋冬のアウターファッションともれなく合う。レザーコートとコーディネイトしてもいいし、ダウンジャケットとあわせればスポーティーにはくこともできる。

夏になれば、Tシャツと短パンであわせるのもお洒落。ボロボロのデニムをロールアップして履くのもいいという懐の深さを持っている。アーミー調のソール(モールドソール) に取り換えてヘビーデューティーにつかってもいいし、ピカピカに磨いてスーツと組み合わせるのもいいというオールマイティーな靴だ。

トリッカーズは幅広で丸くてコバがせり出ていて、主張が強い。はじめは履きこなしに時間がかかる感じがするが、履きこんだ時のやれ感とか、磨くと光り輝く存在感が唯一無比の一品だと私は思う。履きこむほどに、だんだんと佇まいが出てくるので中古でもいい味を出すだろう。

さて、中古で売買するにあたってここで靴の耐用年数についても触れておきたい。靴は、履き方にもよるが10~15年は履ける。底材も「グッドイヤー・ウェルト製法」という製法でオールソールの取り換えが3回まで可能だ。ちなみに私も、靴は15年以上のものばかりはいている。私はフォーマルからカジュアルまで30足以上靴を持っているので、1ヵ月に1~2回しかそれぞれの靴を履かない。だから普通以上に長持ちする。今履いているのも18年目の靴だ。耐用年数がこれだけ長いということは、中古で買い取れるチャンスも埋蔵量も多いということではないだろうか。

ただし、耐用年数が長く唯一無二の一足であっても、キズや汚れで状態が良くない中古をそのまま並べると、ただの汚い売り場になってしまう。 トリッカーズを買い取って、リペアして並べてみてほしい。適度な油分と養分を入れ、きめ細かくしっとりイキイキした革靴は売り場の格を上げる。

次回は、もうひとつのオススメ靴や、メンテナンスの実例など紹介できればと思う。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

359号(2015/01/10発行)11面

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