《皮革製品修復ラボ(46)》エイジングストップ術

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《皮革製品修復ラボ(46)》エイジングストップ術

2017年05月31日

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皮革製品 修復ラボLesson.46 フリマアプリ

シェアエコ時代に求められる

クローゼットの中の、使わなくなったブランドバッグをフリマアプリに出品してお小遣いをゲット。

まだ使いたいけど、ハレの日にしか使わないバッグは寝かしておかずレンタル仲介サイトをつかって貸し出して、ちょこちょこ稼ぐ――。

モノや時間、空間などの遊休資産を活用するシェアリングエコノミーという新しい経済のあり方が急速に拡大している。CtoC取引きを行うフリマサービスもその内のひとつだが、コメ兵や大黒屋など運営に乗り出すリユース企業も出始めている。脅威なのか可能性なのかという議論はあるが、注目されている読者の方も多いのではないだろうか。

自分の所有品を個人間で売買したりレンタルして稼ぐ経済活動が当たり前になり、売却やレンタルを前提とするようになれば、例えばブランドバッグなども劣化させない使い方が求められるようになる。資産価値を維持するために、エイジングストップ術が必要になるだろう。

ここで改めて、エイジングストップ術を紹介しておこうと思う。

カビを防ぐ

とにかく通気性が大事!靴もバッグも基本的に箱の中で保管しておくのはNG。かといって日当たりの良い場所も日焼けや退色を起こしてしまうのでNGだ。日陰で風通しのいい場所に置いておこう。

バッグはフタをあけて吊るし保管するのが理想だ。バッグ同士はくっつけずに保管しよう。革同士を接触させると、貼りついて色がはげてしまうことになる。
靴はキーパーよりむしろ、新聞紙を詰めて湿気を吸い取りきるのがいい。型崩れしている場合は、新聞紙を多めに押し込み成形しながら湿気取りを行おう。

汚れをとる

汚れがつまると革の呼吸が妨げられ劣化する。ストッキングで乾拭きするのがおすすめ。きめ細かく滑りがいいため、革にストレスを与えにくい。逆にタオルは繊維が粗く革を傷つけてしまうので、使わないよう注意!

使用感を防ぐ

バッグをダメージから守るためには電車などでは前に抱き、フタを開ける時には目で金具やファスナーを確認してから開ける。見ないで手さぐりで探すと、知らないうちに細かいキズが増える。細い通路や廊下でもバッグは前に抱こう。壁や手すりに干渉しすぐにキズができる。化粧品やペンなどもポーチにしまい、裸で入れない。 ショルダーストラップとハンドルが両方あるケリーバッグなどはなるべくハンドルを持たないか、ハンカチなどを巻かないとすぐに手垢で黒ずむ。

消費者が手持ちのブランド品を大切に使うことは、リユース事業者にとってもありがたいことだ。マクロな視点で見れば、中古市場に劣化の無い良質な商品が出回るということになる。フリマアプリが、クローゼットから眠っていた中古品を引き出している。リユース会社の人たちと話をするが、このあとどうするかは業界のやり方次第なのだろう。

川口 明人氏
≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

416号(2017/05/25発行)5面

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