遺品整理は買取につながるか?高額品売却済も、価値ある物眠る
2019年03月24日
遺品の取扱いにおいてリユース領域に注目が集まる昨今。中古業界や他業種からの参入が見られる中、遺品整理が商材供給の場所に効果的なのかを探る。
店頭接客で案件開拓
レトロ家電や工具買取
「高価な物は既に売りに出されている。しかし田舎は、どの家庭にも日曜大工で使う工具が眠っている」
(伊藤エージェンシー 伊藤肇社長)伊藤エージェンシーは千葉に買取店「買取センターGP」と総合リユース店「リサイクルエース」を展開し年商7億円を上げる。昨年5月より遺品整理事業を始め、毎週1件以上のペースで案件をこなしている。受注の半数以上は外房や千葉市中心に配布しているチラシの反響によるもの
だが、最近は店頭買取の利用客から遺品整理に繋がる案件が増えている。
「家族が亡くなり、すぐに片付けに着手するケースはあまりない。遺族が段々と買取店などを使い始め、売れそうな物だけを先に売っていく。それから半年や1年経ち、ようやく家まるごとの遺品整理に乗り出すようですよ」(同社長)同社では店頭買取の際に接客時間を長く費やし、「○○はお金に替えやすい」などと伝えてあげることで、リピーター利用の促進を全店で強化している。
1件の作業時間は6時間で、人員は3~4人。サービス料金相場は20万円程度。そこから買取金額分を差し引き、残りを依頼主から徴収。その売上から、ごみ処理の業者へ運搬・処理作業費として7割程度を支払う。「買取金額は1件で2万~3万円程度。ブランド品や貴金属類はあまり出てこないが、レトロな家電、ぬいぐるみ、工具類はよく出てくる。これらはネットでは売れないが、自社の店舗に出すと売れるんです」(同社長)同社は今後、受注した遺品整理を自社だけでは手に負えずにいる同業者に向け協力もしていきたいという。
▲伊藤エージェンシー 伊藤 肇社長
買取店が買わない物を買い、輸出に回す
「案件の多くは買取業者が入った後。一級品は残っていないが、プラモデルや瀬戸物などは出てきます」(大興資源 営業部 早川保浩氏)古紙や段ボール等の資源ごみ回収や中間処理を手掛け、年商13億円を上げる大興資源では、地域住民の声を受け7年前に遺品整理を始めた。横浜市全域を地盤とし、行政や自治会・町内会経由で、遺品・生前整理、不用品回収等を月に約20件こなしている。
自治会・町内会にはその役員住民が参加しているため、そこを起点に市内全戸へチラシ配布ができているという。同社が請け負う案件の多くは、高価な物がほぼ一掃されている状態だ。それでも買取店に断られてしまった物や、はじめから売りに出されなかった物の中に再販価値の高い物が眠っている。
同社は処分品の中から古着や着物、カバン、ぬいぐるみ、瀬戸物などを選別しコンテナ単位で海外輸出を行う業者へ売却している。「サービス料金の相場は20万~30万円。最終的に残る利益は3割程度です。実は当社でも、利幅を上げるために自社で査定・買取・再販ができないかと考えています」(同氏)実際の現場では現金含め、高価な物は僅かながら出てくる。
しかし同社では買取りを前面に押し出しておらず、依頼主から査定依頼されることもない。「現状は高価そうな物を見つけるたびに、依頼主へ確認を取る。誠実な対応が依頼主から親戚・近所へ伝わり、受注増につながっています」(同氏)
家財の整理に特化し年間100件
売却予定の物件に家具や小物でインテリア装飾を施し、購入検討者への販売を促す手法は「ホームステージング」と呼ばれる。これを主事業とするサマンサ・ホームステージングでは、家財の遺品・生前整理に特化し年100件以上の整理をこなしている。スタッフの多くに女性を起用し、「柔らかな雰囲気の中で物品整理を行うことを重視」(サマンサ・ホームステージング 大西真史社長)。
独居老人の孤独死増加や、"終活"の動きが盛んになってきたことが、整理の需要増の背景にあると見ているようだ。同社では引き取った家財の98%をリユース・リサイクルしている。
▲サマンサ ・ホームステージング 大西真史社長
考察
依頼主が専門業者に遺品整理を託す段階では、ブランド品や貴金属類などの高額品は既に売りに出されているケースが多いようだ。そのため、高額品の買取りを狙う業者の場合は、個別での買取りや生前整理など、お客と事前にタッチポイントを作り売却を促す方がよさそうだ。
第459号(2019/03/10発行)24面