アパレル業界の大量生産、大量消費、大量廃棄型のビジネスモデルは大きな環境問題を引き起こしており、業界全体に改革が迫られている。世界的ラグジュアリーブランドを抱え、アパレル産業が経済に大きな影響を持つフランスでは、2020年2月に「循環経済法」が施行、アパレル業界の売れ残り商品を焼却や埋め立てによって廃棄することが禁止され、リサイクルや寄付などの再利用が義務付けられた。
ホームページではスポーツブランドデカトロンの成功事例が「オンラインでレンタルし、店舗でテントを受け取る」と題して紹介されている
「循環経済法」施行を機に創業
リサイクル促進ベンチャーの一つ
これに伴い、フランスでは2020年前後にブランドのリサイクル促進を支援するWeturn(ウィターン)、Faume(フォム)、Les Réparables(レ・レパラーブル)などのスタートアップ企業が次々と創業した。2019年に創業したLizee(リジー)もその一つである。
オンラインプラットフォームや
修理、輸送管理システムなどを提供
Lizeeは、レンタルビジネスのオールインワンソリューションを提供する企業だ。返品管理や在庫のリアルタイムでの追跡などができるオンラインプラットフォームや商品の修理、物流の効率性を確保する輸送管理システムなどを提供し、ブランドの迅速なレンタルサービス事業の立ち上げと運営をサポートしている。
大手スポーツメーカーDecathlon(デカトロン)が同社のサービスを利用して大成功を納めたのを機に注目を集め、今ではアウトドア用品メーカーMillet(ミレー)、ホームセンター大手Leroy Merlin(ルロワ・メルラン)、大手スーパーE.Leclere(E.ルクレール)、ドイツのアウトドアブランドVAUDE(ファウデ)など、40社以上のブランドが同社の顧客となっている。
レンタルは低購買力でエコに敏感な
若い消費者惹きつけるビジネスモデル
近年、中国のSHEIN(シーイン)やTemu(テム)に代表されるウルトラファストファッションの台頭はアパレルの価格破壊を招き、フランスでも若者をはじめ、経済不安を抱える多くの消費者を惹きつけている。JETROのレポートによれば、2023年にフランスの衣類購入全体に占める低価格衣類の割合は71%を占めており、その平均価格は8.3ユーロ(約1400円)だった。このような状況の中、ブランドはレンタルを循環型ファッションを促進する手段であると同時に、購買力が低く、エコロジーや新しいアイテムに敏感な若い消費者を惹きつけるビジネスモデルとして認識し、期待を寄せている。
参考文献:日本貿易振興機構(ジェトロ)海外展開支援部 パリ事務所調査報告(2025年3月)
第608号(2025/05/25発行)20面