第22回 交友録
正木屋質店 杉村尚樹氏の交友録
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正木屋質店 |
渡田質店 |
父の想いを受け継いだ若手のホープ
渡田質店の奥山祐輔君に初めて会ったのは、彼の父が入院する病室でした。彼の父である優さんと親しくしており、お見舞いに伺ったのです。当時の祐輔君はまだ大学生で、愚息と同世代。その後これほど会う機会が多くなるとは、想像もしていませんでした。
結局優さんは、入院から2ヵ月程で逝去されました。「息子が大学を出たら、同業者に暫く丁稚奉公をさせてから実家に戻す」というのが優さんの口ぐせでした。しかし入院中、祐輔君の修行先の話になると、「修業はダメだ」と絞り出すように言い放ったことを、はっきり覚えています。自分の死を悟り、これからは祐輔君に渡田質店を守ってほしいという思いがあったのかもしれません。
387号(2016/03/10発行) 8面