K-ブランドオフ、ブランドオフ買収の経緯と再建の手応え

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K-ブランドオフ、ブランドオフ買収の経緯と再建の手応え

2020年01月03日

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コメ兵傘下で再出発、再建には手応え

山内祐也 社長K-ブランドオフ 山内祐也社長

2019年にリユース業界内で最も注目を集めたと言っても過言でないM&Aが今月3日に成立した。中古ブランド最大手コメ兵による、同業ブランドオフの買収だ。ブランドオフの事業を引き継ぐ、新会社K-ブランドオフ(以下:K-BO)を発足。同社の代表取締役社長に就任したコメ兵執行役員の山内祐也氏に買収の経緯や再建の手応え、今後の見通し等について聞いた。

今回はまとまる可能性高いと判断

--買収が成立し、ようやく話が聞けるわけですが、まずはどんな経緯だったのでしょう。

山内 とあるディールを扱う会社からオファーがあり、我々も手を上げました。ブランドオフは、国内だけでなく海外にも店舗があり、オークション事業を行うなどコメ兵とシナジーが生まれる可能性を感じましたので。今回の件は半年ぐらい前から、準備を含め動いていました。

--しかし、ブランドオフには多額の金融債務という問題がありました。

山内 話を頂いた時に、債務免除の可能性がありました。決定ではなくあくまで可能性の話でしたが、案件の特性上今回はまとまる可能性は高いと考え参加しようと判断しました。

--ただ、複数社が手を挙げていたと聞いています。

山内 どこかは分かりませんが、そうですね。

--とすると、債務免除の可能性は他の会社も条件は同じだったことになりますね。

山内 そうだと思います。

--最終的になぜコメ兵に決まったのでしょう。

山内 恐らくは、スポンサーを募集していたブランドオフとディールをまとめていた企業の間で、経済合理性や従業員の雇用を守るなどの条件を考慮されてのことと思います。他の会社がどんな内容だったか分からないので、なんとも言えませんが、コメ兵が出したバリュエーションと条件が見合ったので、基本合意をして頂いたと考えています。また、基本合意後もいろんな条件を詰めていき、最終的な合意に至ったということになります。

--創業者の安山さんにお金は支払われたのですか。

山内 それはなく、コメ兵はディールに対する金額のみお支払いしました。その後の使途は把握していませんが、恐らくは金融機関等の債務に当てられたのだと思います。

--安山さんは何かしらの形で残られると思っていましたが、退任されたそうですね。

山内 ブランドオフという会社は残っており、安山さんは同社の代表取締役なので退任というのは正確ではありません。当社の経営には参画しないというのが正確な表現です。

--実質的には退任ということになりますが、なぜこういった形に。

山内 双方の話し合いや条件などの調整によりということになります。

--安山さんは今後どうされるのでしょう。

山内 そこは我々には分かりません。

キーワードは「自律」

--安山さん以外の役員、従業員はK-BOに残ると聞いています。

山内 はい、スタッフの方は全員残ってもらいました。店舗も屋号も、オークション事業もそのまま引き継ぎました。ドラスティックに変革していくことを今は考えていませんし、その必要もないかと。1番はスタッフの方に不安になってほしくないので。スタッフの方と協力して立て直していくことになります。

--従業員の方は今回の件をどう捉えていますか。

山内 非常にポジティブに捉えてくれています。コメ兵の理念で従業員と家族のように接するというのがあるので、チームとして、スタッフをないがしろにして進めることはありません。ちゃんと対話をしながら進めていきたいと考えています。これまでコメ兵がM&Aしてきた中、必ず言っているキーワードがあって、それが「自律」という言葉です。自らの道徳法則に従って行動するという意味なんですが、誰かの指示や欲でなく、道徳法則に則って行動するのが重要なことなのです。これまでM&Aしたイヴコーポレーションもシェルマンも屋号の統一はしていません。それはコメ兵ではできないことができるチームだし、それぞれが自律をしてまずチームをちゃんと作ろうと。コメ兵の理念に反することや誠実な商売に反することはしないでということだけを言っています。

--債務免除によりB/Sの大きな問題は解決されました、後はP/Lの赤字をどう改善させるかだと思いますが。

山内 いろんな面でコストの見直しを図っていきます。また、これまでは財務的に苦しく、積極的にできなかった環境があります。買取合戦においても競争力を失っていました。このあたりはコメ兵とのシナジーを使ってもっと盛り上げていきたい。これが回り始めれば、スタッフは優秀ですし、この事業を良くしたいという熱意は間違いないので、数字はついてくると思います。その環境を整えるのがまず僕らがやることかなと。

--手応えはいかがでしょう。

山内 業績は既に底を打っているため、早期に黒字への転換が図れるのではないかと見ています。

--K-BOでは今後どんな展開を考えていますか。

山内 国内や海外事業、オークション事業、コメ兵とのシナジーなどいろんな可能性は考えられますが、戦略的なことは今後立てていく事になり、今の段階でお話することはできません。

買収による規模拡大のメリットとは?

--買収によりコメ兵グループとしての売上高は600億円程度と中古ブランドでは他を引き離す規模になりました。規模の拡大についてはどういったメリットがあると考えますか。

山内 物量を確保できるというのは大きなポイントと考えています。テクノロジーへの挑戦であったり、ビッグデータ、AIも含めて有利になります。また、お客様が欲しいものを調達できることはニーズに応えられる幅が広がるので強いです。顧客には、一般の方や法人の方もおり、どちらもお客様商売だからです。そしてこれを1つのシステムでできるようになる。コストが増えなければ、価格に転嫁できるので、買取であれば、高く買うことができ、販売であれば安く提供できるなどお客様に還元できます。ただ、単に売上の数字を大きくしたいわけではなく、コメ兵グループのポジションというか、つまり大事なのは売上高ではなくGMVと考えています。

--GMVと言うことは、売上以外にオークションの扱い高なども含めた総流通額ということでしょうか。

山内 そうです。GMVが拡大することで、今後の自社のポジショニングが有利になると考えています。例えば、どこかの会社がパートナーを探していた場合、その判断基準は利益ではなく、GMVということになるでしょう。テクノロジーや業界再編の際にGMVを持っていることが有利になると考えています。

--GMV=シェアという認識で合っていますか。

山内 そうですね。現物を見れるシェアで、そこでさらに全部写真データも持っていれば強いですよね。

--今後も同業を買収することもありえますか。

山内 可能性がないとは言えません。

--その場合、GMVの拡大でシェア率を高めるという観点から考えると、その対象はリユース事業者の中でも、中古ブランド事業者ということになりますよね。

山内 分からないです...。業界再編が進んでいるので。GMVまでしか話せないですが、これが拡大していけば、さらにお客様のニーズに幅広く応えていくことができると考えています。

第478号(2019/12/25発行)9面

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