たんす屋、着物や帯の1000円均一ショップ化で入店客3倍増

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たんす屋、着物や帯の1000円均一ショップ化で入店客3倍増

2020年02月08日

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着物リサイクル春夏秋冬
第233回 1000円均一ショップでお客倍増

中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」中村健一 社長
東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長

1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。

1000円の呼び込み効果てきめん
入店客3倍増で繁盛店の好循環

昨年の12月上旬、大阪の北心斎橋筋店のFCオーナーから、長期にわたる店頭日販低迷でご相談を受けた。還暦を過ぎたオーナーは、今から30余年前、私が呉服問屋の東京山喜の京都支店長時代に、同業の呉服問屋から弊社に転職してこられた。そして約10年前からたんす屋北心斎橋筋店のFCオーナーになって頂いている。

オーナー着任後、比較的売上は順調で、コンスタントに月商300万円オーバーを維持してきた。しかし、直近の2、3年前から徐々にお買上げ客数が減少し、売上も300万円を割り込むことが頻発。いよいよ200万円にも届かない月が散見されるようになり、店舗運営に迷っておられた。

これまでは優良な顧客に恵まれて安定した売上を確保できていたが、新規客が増えずに先細り傾向が顕著になっていた。

人通りはあるが半数は外国人

昨年の11月に北心斎橋筋店に臨店した折には、店舗前の人通りの多さでは浅草の新仲見世店にも引けを取らないように思った。そこで、北心斎橋筋店の1日のお買上げ客数が10人そこそこなのはおかしいとオーナーに言った。浅草の店では月間のお買上げ客数がコンスタントに1000人を上回っている。つまり1日のお買上げ客数が優に30人を超えている。

すると、オーナーからは「確かに店の前には毎日沢山の人が通ります。でも実際半分くらいは外国人ですよ!」と返事が返ってきた。更に、外国人は買ってもせいぜい1000円の着物や帯、ということだった。

それを聞いて、過日の浅草店のオーナーとのやり取りが思い出された。浅草店のオーナーに、売上が順調ですが何が売れていますか?と聞いたところ「1000円の着物や帯が売れています!」と返事が返ってきたのだ。

確かに1000円の着物や帯ばかり売っていてもなかなか売上が上がっていかない。月商300万円を実際に1000円の着物や帯で売上げる為には、月に3000点もの着物や帯を売らなくてはならない。しかし実は浅草の新仲見世店ではお買上げ客単価が5000円~6000円で、結果的に月商が500万円~600万円に達している。

3ヵ国語の黄ビラで訪日客にもアピール

そこで、敢えて私から北心斎橋筋店のオーナーに一つのご提案をした。それは、着物や帯の1000円均一ショップだ。オーナーからは予想通り、1000円の着物や帯を毎日100点売るのは想像しづらい!と返事が返ってきた。そこで私は更に具体的なイメージをオーナーに伝えた。それは、店舗前の三分の二を1000円の着物や帯で埋め尽くし、店頭には、日本語と英語と中国語で「着物や帯1000円均一!!!」としっかりと目立つように黄ビラを貼りまくるということだ。英語の黄ビラは「KIMONO&OBI ALL ¥1000!!!」中国語の黄ビラは「和服 和腰帯全部1000日元!!!」。

大切なことは、お客様の動線を考えて、店舗の正面から見えることはもとより、北から南下するお客様にも、南から北上するお客様にもしっかりと目立つように黄ビラを貼ることだと伝えた。

お客様は外からしか入って来ない。この説明でオーナーも具体的なイメージが湧いてきたようで、早速に12月13日から、着物や帯の1000円均一ショップのスタートが決まった。店舗の後方の三分の一のスペースは、大切な顧客様の為にも従来通りの品揃えを圧縮して残すようにした。

結果的に、最初の一週間で、お買上げ客数171人、売上73万3000円の成果が出た。一日のお買上げ客数が平均で24.4人、日販平均が10万4714円だった。お買上げ客単価は、4286円で従来の北心斎橋筋店の約5000円を少し下回ったが、お買上げ客数は倍増した。オーナーいわく、入店客数は、楽に3倍以上になったそうだ。

1000円均一の着物黄ビラで1000円均一をアピール

来店者の増加 お客がお客を呼ぶ

つまりは、着物や帯の1000円均一ショップ化することで、従来の着物のお客様以外に、外国人も含めて従来なら入店しなかった様なお客様がどんどん来られるようになって、そのお客様が、又新たなお客様を呼び込むといった効果を発揮したようだ。

当然ながら、入店しても何も買わずに帰られるお客様も多くなるが、店舗に「繁盛してます!」の波動が生まれそれが好循環をつくることになったようだ。その後もコンスタントに一日のお買上げ客数が20人を上回るようになってきた。1000円均一につられて入店した外国の方が、結果的に1万円を超える着物が気に入ってご購入頂くケースもあるようだ。

今後は、この着物と帯の1000円均一ショップに更に磨きをかけると同時に、類似した環境の店舗オーナーや店長さんと、北心斎橋筋店の事例を共有していきたい。そして、共感して頂けた店舗から横展開していくことで、既存店舗の日販向上を目指したいと考えているが、いかがだろうか。

第480号(2020/1/25発行)18面

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