交換会閉鎖で、古書業界に危機感 多くの自治体で古書店に「休業要請」

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交換会閉鎖で、古書業界に危機感 多くの自治体で古書店に「休業要請」

2020年05月19日

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コロナショック

営業か休業か。揺れる店主の判断

4月13日、東京都が休業要請の詳細を発表。古書店は休業要請対象(100平方メートル以下の店舗は対象外)となったが、新刊書店は対象外となった。その後、他の自治体でも同様の要請が出されている。東京都と神奈川県の古書店5店に電話取材を実施し、現在の運営状況や今後の対策を聞いた。

古書店

「マスコミは、僕ら古書店が東京都に対して文句を言っているところを取材したがるんですよ」。

そう話すのは神保町のある古書店店主だ。13日以降、テレビなどからの取材依頼が殺到したが、話題は新刊書店VS古書店がほとんど。同じ本を扱う店でありながら、「不要不急」の判断が分かれたことへの意見を求めるものが多かった。

とはいえ、個人経営の古書店は100平方メートル以下がほとんどで、実際には休業要請対象外となる。営業するか否かは店主の判断に任されているのが現状だ。休業か営業か、それぞれの店舗の事情によって対応は異なる。

専門書を扱うこの書店では15日まで店を開けていた。レジ前にはビニールシートを垂らすなどの工夫をしていたが、スタッフも不安そうだった。しかも店主自身持病があり、高齢の家族もいる。「従業員や家族の命も守らないといけない。条件的には営業して良くても、もし感染者が出たら古書店業界全体のイメージが悪くなるとも思う」と言う。

今は通販にのみ対応し、従業員には出社回数を減らしたり、電車通勤を避けて自転車通勤にしてもらっている。自転車を持っていない従業員には自転車を付与。作業中は換気に注意し、作業後は使用したパソコンも消毒するなど対策をとっている。

同じく専門書を扱う都内の古書店は、学校が多いエリアにあり、メインのお客は大学生や教員。「休校になってから常連のお客様が来なくなりました。その代わりに、行くところがなくてたまたま書店があったから入ってくるお客様が増えてきました。平時なら新規客は嬉しいけれども、感染リスクを考えると怖い。13日から店を閉めました」と話す。

古書店は心の拠り所
対策しながら営業

営業続行をすぐに決定した古書店もある。「うちはいわゆる街の中の本屋。劇場や映画館などが閉鎖されている今、書店が心の拠り所になっている一面もあります。お客様の顔を見ていると閉められないなと思いました」と都内のある古書店店主は話す。

この店では感染予防対策として店内に2ヵ所消毒液をおき、自動ドアは開けっぱなし。スタッフはマスクをして接客している。

営業を続ける新刊書店の方が大変

吉祥寺の古書店「百年」も、姉妹店の「一日」は休業中だが、百年は営業を続行した。店主・樽本樹廣さんはその理由を「感染拡大防止協力金の50万円だけでは、社員やアルバイトの雇用を守れないから」と話す。

現在は店頭には樽本さんが立ち、その他の社員やスタッフは姉妹店でバックヤードの仕事をしている。

古書店が「不要不急」と判断されたことに対しては「それに怒っても仕方がないと思います。それよりも保障の方が大切です。逆に営業していいと言われた新刊書店の方が大変なのではないでしょうか」と冷静だ。

古書市場の閉鎖で仕入れ・買取に打撃

古書業界として一番深刻な問題は古書市場(交換会)の閉鎖だ。東京古書会館は4月9日から5月6日まで休館の予定(4月30日現在)。その他の市場も閉鎖しているところがほとんど。古書関係のイベントも多くが中止になった。

仕入れの多くを市場に頼っている古書店は、仕入れルートが絶たれている。自店で仕入れができる古書店でも、買い取った本を市場に出せない苦悩がある。

「自店で販売しない本は市場に出すことで現金化できる。大型買取をした場合でも、置く場所がなければ市場に出せばよかったが、今はそれができないので大型買取に応じられないジレンマがある」と樽本さんは話す。

神奈川のある古書店では急遽9畳ほどの倉庫を新たに確保。市場に出せない在庫をそこにキープしている。

「家の片付けついでに本の出張買取を依頼されることも増えた。反面、買取りを申し込んでいたお客様から、今の時期は避けたいと予定を伸ばすケースも出ている」と話す。

巣ごもり需要でネット販売は好調

巣ごもり需要で、ネットで古書を買う人も増えている。前出の神奈川の古書店ではAmazonで販売しているが、「今まで売れなかったような本が売れる。偏りはなく、オールジャンルで売れている感覚」と話す。

百年では自社サイトで、「野坂昭如セット」などの「セット売り」を始めた。個人店が通販を行う場合、単価を高くしないと利益が出ない。「応援の意味でも購入してくれていると思う」と樽本さん。

東京都古書籍商業協同組合のサイト「東京の古本屋」では、4月14日「古本を愛してくれるお客さまへ」と題したお知らせを掲載。「古本屋は自分の行く道が正しいのか間違っているのか、日々悩み、心は揺れ、疲弊していっています。(中略)しかし文化の火は絶対に消してはいけない。疲れ切った心を抱え冷たく閉ざされた世界に、本の力は必要です」と言うメッセージは、色々なところでツイートされ、静かに広まっている。

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第487号(2020/5/10発行)11面

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